▲ジル・ビルヌーブのレース・キャリア:1950~1976

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スノーモービル時代のジル・ビルヌーブ

◎Musee Gilles Villenueve より…
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今回の「ジルとヘンリの神話作用」は、ジル・ビルヌーブのレースキャリア概観の1回目、F1にデビューする前年の1976年までの経過をまとめてみた。上でもリンクをご紹介した"Musee Gilles Villenueve"(英語・フランス語・イタリア語)を参考にさせていただいた。


■1950年

●1月18日、カナダ・ケベック州(フランス語圏)のSaint-Jean-sur-Richelieuで出生。3年後、弟ジャック(後に彼もF1へエントリーする)が生まれる。以前レース雑誌等では1952年生まれとされていたようだが、実際は1950年生まれ。年齢を2年サバを読んだのは、スポンサー対策のためとも言われている。

■1966年(16歳)

●ハイスクール卒業時に運転免許を取得、最初のクルマはシュコダ

■1967年(17歳)

スノーモービルのローカル・レースに出走。

■1970年(20歳)

●10月17日、ジョアン・バースと結婚。

■1971年(21歳)

●4月9日、長男が誕生。弟と同じ「ジャック」と命名、後の1997年F1ワールド・チャンピオン、ジャック・ビルヌーブである。

■1972年(22歳)

●Moto-Skiスノーモービルチームに加入。

■1973年(23歳)

●長女メラニーが誕生。4輪モータースポーツスノーモービルと平行して始め、フォーミュラ・フォードでケベック・チャンピオンとなる。

■1974年(24歳)

スノーモービルの世界チャンピオンに輝く。
●また、Ecurie Canada Racing Teamからフォーミュラ・アトランティックにも参戦。

■1975年(25歳)

●フォーミュラ・アトランティックで初優勝(マニトバ州Gimliサーキット)

■1976年(26歳)

●フォーミュラ・アトランティックで年間10勝以上マーク。シリーズ・チャンピオンとなる。
●ヨーロッパF2レースに参戦(フランス・ポー)。


キャリア上のトピック


<1> スノーモービルのレース経験

まず、ジルの「勇敢なレーサー」「絶妙なマシンコントロール」と言われるその原点として、スノーモービルのレース経験をまず挙げておきたい。ジルは1974年、24歳でスノーモービルのワールド・チャンピオンに輝き、その後は既に平行して始めていたシングルシーターのモータースポーツへと活動の場を移していくことになるのだが、スノーモービルのレースは周りが雪煙で視界が十分に利かない中を全開で駆け抜けていかなければならない過酷なものだという。このスノーモービル体験が、瞬時の判断力とそれからマシンの挙動の予測も含めたドライビングを組み立てていくマネジメント能力を養ったと思われる。

事実、F1にステップ・アップした後のジルは特に「雨のレース」で強いと言われていた。おそらくジルはWRCに進んでいても相当の成功を収めることができたのではないかとも考えられる。

<2> ヨーロッパのレースへの関心

北米のカナダ生まれで、地元のジュニア・フォーミュラからモータースポーツの活動を始めたジルだったが、彼が北米大陸でのシングルシーター・レースの頂点であるCARTインディーカーワールドシリーズ(現チャンプカーシリーズ/IRL=インディ・レーシング・リーグに分裂)ではなく、ヨーロピアンレースの頂点であるF1へ進んだのは何故か…という疑問が出てくる。フォーミュラ・アトランティック・シリーズは現在も「フォーミュラ・トヨタ・アトランティック」という名でシリーズが継続されてはいるが、基本的にF1へのステップ・アップと直結しているシリーズではない。むしろこのシリーズにはチャンプカーやIRLへのステップ・アップを志向して参戦してくるドライバーがほとんどだと思われる。

ただ、ジルが参戦していた当時のフォーミュラ・アトランティックには、シリーズ活性化のためかイベントによってはF1の有力ドライバーが招待を受けてスポット的に参戦していた。後にF1でチャンピオンシップを制することになるケケ・ロズベルグや、アラン・ジョーンズやジェイムズ・ハント等々…。1976年、ジルはそのヨーロッパF1組をことごとく退け、圧倒的な勝利を収めてしまう。ラリーカーと見紛うばかりにマシンをドリフトさせ、スライドさせてアタックするジルのドライビングはすぐさまヨーロッパのレース界に伝えられ、一躍ジル・ビルヌーブというドライバーが注目を集めることとなった。また、ジル自身もモータースポーツの本家たるF1のビッグ・ネーム達をうち破ったことで「それじゃあオレもF1で」と考えたのであろう。既に妻帯者であり2児の父でもあって、スノーモービルでは輝かしい栄光を得たジル・ビルヌーブ、26歳での転機の訪れである。


次回はF1デビューの1977年以降の年譜をたどっていきたい。各シーズンごとの最高位やポイント、チャンピオンシップのランキング、それからレース・キャリアの上で重要と思われるレースについても整理していきたいと考えている。