◇【第16回】トンイル号/ピトゥルギ号用客車~韓国鉄道博物館(9)

「海外の鉄道・バスの旅」、今回は韓国鉄道博物館の9回目として、トンイル号用の客車とピトゥルギ号用客車保存車両のスナップをご紹介します。

今更ながらの感もありますが、韓国国鉄の列車の種別について簡単にまとめると、以下のようになります。

KTX開業前】
セマウル号ムグンファ号-トンイル号-ピトゥルギ号(2000年廃止)
KTX開業(2004年)後】
KTXセマウル号ムグンファ号-通勤列車(トングンヨルチャ)

セマウル号ムグンファ号が日本で言う「特急」に相当する列車で、トンイル(統一)号が急行、ピトゥルギ(「鳩」という意味)号が普通列車に相当しますが……中にはセマウル号を「超特急」、あるいはムグンファ号を「急行」とする記述も時折見かけます。

KTX開業前後での列車種別の変化の特徴は、トンイル号が中・長距離のものはムグンファ号に「格上げ」(停車駅はさほど変わらないので実質値上げみたいなもの)され、ローカル線の短距離のものは通勤列車へと二極分解したところでしょうか。ここらあたりは日本のJRの急行列車が特急と快速・普通列車へと二極分解していった事情と近いものがあるように思われます。ただ、韓国の中長距離列車は、KTX登場後はムグンファ号が列車毎に停車駅を変えるなど実質的に「急行から普通まで」幅広く担っています。


それでは、またまた例によって前置きが長くなりましたが、在りし日のトンイル号とピトゥルギ号に使用されていた専用客車の写真をご覧下さい。


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上の写真はトンイル号専用客車・13101号車、1965年仁川工作廠製です。クリーム地に緑色のカラーがトンイル号のイメージカラーで、日本製気動車でトンイル号の運用に就いていた車両もこのカラーに塗られていた(「韓国鉄道の旅」JTBキャンブックス:P97参照)ようです。


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車内はご覧のとおりシートバックを前後に移動させるタイプの転換クロスシートで、白いクロスがシートバックに掛けられているのはやはり優等列車らしいところです。台車はさすがにエアサスではなく(ムグンファ号セマウル号の客車はエアサス)、コンベンショナルなコイルばねが使われています。


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次の写真は、各駅停車のピトゥルギ号用の客車で、クリーム地にブルーがイメージカラーとなっていました。この12061号車は1962年仁川工作廠製(「韓国鉄道の旅」では「ソウル工作廠」製と紹介されていましたが、現地の説明文では仁川製となっていました)、長さはトンイル号用13101号と同じ21mですが、車重は36トンと13101号の30トンよりは若干重くなっています。


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車内はご覧のとおり「旧客」のデフォルトとも言うべきボックスシートがずらりと並んでいます。「鉄道ジャーナル」誌のレポートで京義線のローカル列車で客車列車のピトゥルギ号の記事を見たことがありますが、この時はもうロングシートに改造されていた記憶があります。台車は……いにしえのリーフ・サス主体の構成。今やリーフ・サスの実物を間近で見るのはかなり貴重な経験ですが、板バネのいかにも「荷重を支えている」という存在感もある種の「メカニカルなエ○ス」といったところでしょうか(?)。


次回は……韓国唯一のナローゲージ路線だった水仁線の保存車両のスナップの予定です。