▲Rd17ブラジルGP(2):勝手にF1ドライバーズ・コンテスト2007

<前回記事からの続きです>


一昨年はシーズン7勝の最多勝をマークしながら1984年&88年のアラン・プロストとなってタイトルを逃したキミにとっても、正直「絶対逆転できる」というよりは「またダメかもしれない」が正直なところだったのかもしれない。しかし「チャンピオンシップがどうであれ、とにかく前にプッシュ」し続けたキミのタイトル獲得は「いいタイトルの取り方」だったと思う。

もちろんタイトルは「狙わなければ」、体制を整え、マシンを仕上げ、レース戦略を組み立てていかなければ取れない。しかし、キミは形勢が不利な時でも、予選でポールが取れない時であっても、少しでも決勝では前に出ようと常にプッシュを続けていた。「チャンピオンシップ制覇のために頑張る」ではなく「大いに頑張った結果がチャンピオンシップ制覇」という勝ち方だったと思う。

でもタイトルを決めたからといっていつもと変わらなかったのがやっぱり「キミイズム」。

表彰式では故アイルトン・セナのように「喜びのセルフシャンパンシャワー」をするでもなくいつものようにシャンパンをいったんグイッとラッパ飲みしてからシャンパン・ファイトに臨んだ。しかも一通りのセレモニーが終わると、シーズン終了/タイトル決定時のいつものヤツ……2位、3位のドライバーや表彰台に上がったチームスタッフの皆がポディウム1位の場所に立ち肩を組んでポーズを取る、というアレも忘れて「はいはい、アジャイルアジャイル。これからプレカンね」といった感じで奥へ引っ込もうとしてジャン・トッドに促され、また表彰台に戻る、といった具合だった。その後のプレス・カンファレンスもまたキミらしい。「タイトルが絶望的とおっしゃってた時期もありましたが…」と振られて、「え、ボクそんなこといつ言ってましたっけ?」(あ、ひょっとして言ってたかも)とニヤリとしてみせた。役者である。


あと今回のブラジルGPは、は新たな日本人ドライバーデビューの場としても記憶しておきたい。

かの「F1遣唐使中嶋悟氏の長男、一貴選手が最終戦でテスト・ドライバーからレギュラーに抜擢、遂に親子2代でのF1デビューを果たした。私自身がF1を意識して見始めた頃には想像すらできなかっただけに「カズキ・ナカジマ」の名を見ると感慨深いものがある。

予選ではマシンのセットが決まらず19位スタートとQ1落ちに終わったが、スタートで中団の下位あたりにジャンプ・アップ、最大のハイライトは佐藤琢磨との競り合いを制して前に出たところだろう。マシン的には「腐っても鯛」(?)のウィリアムズなだけに琢磨よりも有利だったとしても、相手はこれまでの日本人F1レコードをことごとく塗り替えていった琢磨である。やはり前身の国際F3000とは様相を一変して激戦区と化したGP2で揉まれているだけあって、全く物怖じしないレース運びだった。チームメイトのニコが表彰台目前の4位まで躍進したのに対し、10位フィニッシュとポイント獲得はかなわなかったが、「ただ走っていただけ」ではなく、攻め続けた結果としてのトップ・テンフィニッシュは十分なデビュー戦だったと思う。

トヨタはカズキをレギュラーシートに乗せるなら来年しかないと思う。どうやらもう1年……と考えているようだが、また来年になればドライバーズ・マーケットも大きく変わってしまうかもしれない。富士の一件で完全にミソを付けてしまった感のあるトヨタが「名誉挽回」を図るならカズキをウィリアムズでもトヨタ本体でもどちらでもいい、レギュラーシートに押し込んで「オトコにしてみせる」のが一番なのではないだろうか。



【「今回頑張ったドライバー」第17戦(最終戦)までのランキング】
1位 85点……キミ・ライコネンフェラーリ
2位 65点……ルイス・ハミルトンマクレーレン)
3位 46点……フェルナンド・アロンソマクラーレン
4位 37点……フェリペ・マッサフェラーリ
5位 20点……ニック・ハイドフェルトBMWザウバー
6位 14点……佐藤琢磨スーパーアグリ
7位 12点……ヘイッキ・コバライネンルノー
8位 10点……ロバート・クビサBMWザウバー
9位  6点……ニコ・ロズベルグ(ウィリアムズ)
9位  6点……セバスチャン・ベッテルBMWトロ・ロッソ
9位  6点……アレクサンダー・ブルツ(ウィリアムズ)
9位  6点……エイドリアン・スーティルスパイカー
13位  5点……ジェンソン・バトン(ホンダ)
13位  5点……デビッド・クルサードレッドブル
15位  3点……中嶋一貴(ウィリアムズ)
15位  3点……ラルフ・シューマッハトヨタ
15位  3点……マーク・ウェバーレッドブル
15位  3点……ジャンカルロ・フィジケラルノー
19位  2点……アンソニー・デビッドソンスーパーアグリ
19位  2点……ヤルノ・トゥルーリトヨタ
21位  1点……ビタントニオ・リウッツィトロ・ロッソ
21位  1点……マルクス・ヴィンケルホック(スパイカー