■No.2:呉羽の里から・・・

第2回はG4ボディの「呉羽バージョン」、呉羽自動車工業製の同型ボディについてのお話です。

呉羽自動車工業が現在は三菱自動車グループの「三菱ふそうバス製造」となっているのは前回の最後でお話ししたとおりですが、呉羽自動車工業とは、元々は「呉羽紡績」という紡績会社の富山工場でした。その後東洋紡の系列会社となり、太平洋戦争中は戦闘機の機体製造に転換、1944(昭和19)年に呉羽航空機となりました。

戦後のバスボディメーカーの多くが、航空機の機体メーカーからの転業組だった(有名な例が中島飛行機富士重工業でしょうか)のと同様に、戦後は航空機のモノコック製造技術を生かしてバスボディ製造に転じ、呉羽工場と社名を変更した後、1950(昭和25)年には呉羽自動車工業と再度社名を変更し、以降は前回書いたとおりです。

呉羽自動車工業は、当初はあらゆるメーカーのシャシーにボディを架装していましたが、1956(昭和31)年から三菱製シャシーとの系列生産を開始し、その後は三菱専業のボディメーカーとして販路を広げていきました。ボディワークも三菱純正のものと似たタイプのボディを製造しており、G4タイプのものは1979(昭和54)年まで納入していて、今なお営業車が現存しています。私が確認できているのは、土佐電鉄(MP117、MP517)と沖縄バス(MP118)で、沖縄バスは730バス(1978年7月30日、右側→左側通行移行に伴って導入したバス)の貴重な生き残りとして動態保存されることが決まっているようです。

呉羽製のボディは三菱純正のものと「同型の」と何度か書いていますが、実際には下記のような違いがあります。それでは具体的に写真を見ながらご説明しましょう。


1 前面形状の違い

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【左】三菱純正(滋賀交通MR520)【右】呉羽Ver.(阪急バスMS512)

(1) ヘッドライトベゼルの形状
ヘッドライトベゼル、つまり前照灯を納めている枠というかケースのことですが、三菱純正は楕円形、呉羽バージョンは台形を横に寝かせたような形状をしています。このベゼルの形が両者の違いとして一番特徴的な部分でしょう。
(2) 標識灯の位置
ヘッドライトベゼルの下、やや外側にオフセットして装着されているのが三菱純正、ベゼルの真下にあるのが呉羽バージョンです。
(3) ベンチレータの位置
ヘッドライトベゼルの真上にあるもの、中央部分にオフセットして装着してあるもの・・・とパターンがありますが、三菱純正と呉羽バージョンの違いというよりは、シャシー形式またはモデルイヤーの違いかもしれません・・・。

2 リア形状の違い

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【左】三菱純正(神戸市交通局MR410)【右】呉羽Ver.(富山地方鉄道MR410?)

(1) 雨樋の形状
三菱純正は、はっきりとしたエッジシェイプの雨樋がリアウィンドーの上下に付いています。一方呉羽バージョンの方はボディの中に埋め込まれているのか、リアウィンドー回りはすっきりとした曲線を描いています。
(2) エンジングリルの形状
これは、三菱・呉羽の違いというよりはシャシーのモデルイヤーの違い、といった方がいいでしょう。年式が新しくなるほど開口部は小さくなっています。




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上の写真は・・・神戸市交通局が70周年記念として2000年9月にリリースした路線バス3台セットで、トミカのバスシリーズから神戸市交のカラーに塗り替え、ロゴ等を入れたものです。上からいすゞBX系、三菱ふそうMR系、同じくMP系・・・と説明があります。

これらはトミカの既成のモデルがベースになっているので、2段目と3段目は、神戸市交では実際には存在していないモデルではないかと思われます。2段目の呉羽バージョンの三菱G4・・・前面の屋根の曲線から見て、1971(昭和46)年までのバージョンでしょうか・・・。呉羽バージョンでは、前面の屋根上形状は先代のK4モデルの形をしばらくは踏襲して、1972(昭和47)年のマイナーチェンジ時に三菱純正と同じ形状になっています。

あと余談ですが3段目はエアロスターK(呉羽製)で・・・実際には落合営業所にこのタイプがいました。ただ、色違い(今のノン・ステップバスのカラー)で前後扉のものでしたが・・・。それでも箱のイラストには三菱純正のG4ボディ、エアロスターM(三菱純正)と実際にいたものが描かれていたのがまた面白いところでした・・・。

他のブロガーさんで、当時の古いバスの記事を書かれている方は・・・おられます。いつも貴重な鉄道写真をupされているひろみやさんが「なつかしの鉄道」“なつかしの首都圏”番外編 にこれまた貴重な西武バスの写真があります。一つ目ライトのバス写真は私もフォローできていないところで・・・こちらのほうの記事もぜひご覧下さい。


【参考リンク】
*三菱ふそうバス製造 -Wikipedia
*沖縄路線バスどっとこむ
【参考文献】
*「日本路線バス総合カタログ 1985」