●第5回:幌の形態いろいろ(2)チューブタイプ

3月最初の「ホロフェティストの部屋」更新記事です。
今回は「幌の形態いろいろ」の第2回、「チューブタイプ」の幌についてのお話です。

【構造・特徴】
 大別して次の2タイプに分かれる。
 1)円筒形のゴムチューブを組み合わせて「幌」を形成する。=「円筒タイプ」
 2)ゴム製チューブ一体型の「ダイヤフラム」が「幌」となる=「ダイヤフラムタイプ」
【採用例】
 1)については、欧米での採用例は多数あるが、日本での採用例はほとんどない。
 2)については、欧米での採用例多数、日本でも最近新幹線等の内幌に採用例が見られる。


イメージ 1

SNCF(フランス国鉄)のコライユ特急 1994年6月 アビニヨンAvignon駅


まず最初の写真は・・・ヨーロッパ・タイプの幌の典型ともいえる「円筒形タイプ」で、特に客車の最後尾を見るとほとんどこういう形態をしています。円筒形のチューブを門の形状に組み合わせて「幌」にしていますが・・・このタイプでは幌枠がありません。材質から考えて、そのままで既に形状の保持もできているため「特に必要ではない」のかもしれません。

・・・と、今回の記事での私の手持ち写真はこれで終了です。とはいえ、前幌をメインとしているこのコーナーで客車のケツ見せて終わり(笑)では申し訳ありませんので、あとはフリー素材(つまり転載可)のモノやリンクのご紹介等でお話を進めていきたいと思います。


イメージ 2

ARR(アラスカ州立鉄道)のローカル列車 Budd RDC スワードSward駅

(「世界の車窓から」アラスカ編・ビデオ画像)

画像の「Budd RDC」とは、1950年代後半にアメリカのBudd(バッド)社で制作され、北米を中心に地域輸送に今なお活躍しているディーゼルカーで、"RDC"とは"Rail Diesel Car"の略です。両運転台の単行運転が可能なタイプを中心とした車種展開で、エンジンはどのタイプもカミンズ製のハイパワーユニットを搭載、荷物室の有無等で次の5タイプに分かれます。
RDC-1:全室客室タイプ。
RDC-2:1/3程度が荷物室のタイプ。
RDC-3:半分が荷物室のタイプ。
RDC-4:全室荷物室のタイプ。
RDC-9:"Centre-Coach"と呼ばれる中間車(運転台なし)タイプ
このBudd RDC豪快なスタイリングでぜひ一度乗ってみたい逸品です。ちなみに米国Budd社は、ステンレス車両制作メーカーの老舗で、日本でも東急車輌ステンレス車を開発するときに範と仰いだ会社だとか。

あと、この「チューブタイプ」の例としては、台湾鉄路局のDR2510形のディーゼルカーがあります。この形式は、1992年に2両のみ制作された台湾初の国産DC(カミンズのパワーユニット搭載)で、台湾・唐榮工廠製のスタイリングは野暮ったい感じがしますが(笑)、台湾鉄道マニアの間では、希少車ということもあって絶大な人気があるようです。

●台湾鉄路局DR2510形気動車
花蓮機務段・写真集よりDR2511(Side-1)http://home.kimo.com.tw/wu344022/2510.htm
花蓮機務段・写真集よりDR2512(Side-2)http://home.kimo.com.tw/wu344022/dscf4440.htm
●東アジア鉄道イソウロウ事務所(管理者MINEYUKIさん)
http://homepage3.nifty.com/bong-seol-gang/index.html
*「台湾」南廻線の気動車DR2510にイソウロウ
http://homepage3.nifty.com/bong-seol-gang/starthp/subpage10.html



さて、次は「ダイヤフラム」タイプのものですが・・・ともかく下の写真をご覧下さい。


イメージ 3

ベルギー国鉄 AM96形電車

【FreeFoto.Com http://www.freefoto.com/index.jspよりお借りしています。】
(該当ページ:http://www.freefoto.com/preview.jsp?id=25-05-12&k=Belgium+State+Railways

いかがでしょうか(笑)。妻面の輪郭全体がゴム製の「ダイヤフラム」を形成しているこのタイプは、連結時にはそのまま顔面同士がぴったりと密着、運転席は内側にきちんと収納されるようになっていると思われます。これなら分割・併合時の幌のややこしい取り扱いは不要ですし、幌そのものの保守・管理もかなり楽になるのではないでしょうか。それにしても・・・これ、ネットで見つけたとき・・・・・・不覚にも狂喜乱舞して喜びました(爆)。こういうの、一体誰が考え出したんでしょうか。もう食ってるものが違う、としか言いようがありません。

●AM96-EMUの諸元について(Railfaneurope.netより)
http://www.railfaneurope.net/list/belgium/belgium_sncb_mu.html
●AM96-EMUの画像について(Railfaneurope.netより)
http://www.railfaneurope.net/pix/be/electric/emu/AM96/pix.html


ちなみに、この「顔面貫通幌」タイプ、ベルギーが元祖というわけではなく、元々はデンマーク国鉄(DSB)のIC3気動車が元祖です。国土に島が点在し、フェリーに列車を積み込むことが多く、場合によっては編成をばらして積み込まなければいけないことも多いデンマークの交通事情が産んだ合理的なシステム。ディーゼルカー(DMU)3両1ユニットのIC3がリリースされたのは1990年、以降3両1ユニットの電車(EMU)タイプ、4両1ユニットのIR4(電車タイプ)と勢力を徐々に拡大していきました。

ただ、JTBキャンブックス「世界のスーパーエクスプレス」のIC3の項では「通り抜けはできない」と書かれていて、通り抜けが出来るのは乗務員だけ、という扱いなのかもしれません。もし、ご乗車になられた方がおられましたら・・・その辺りの事情もぜひご教示下さればありがたく思います。

このIC3タイプ、スウェーデン、モロッコイスラエル等の各国鉄、それからAMTRAKにも納入され、同型の車輌が世界各地で活躍しているようです。

■DSB(デンマーク国鉄)IC3・IR4の諸元について(Railfaneurope.netより)
http://www.railfaneurope.net/list/denmark/denmark_dsb.html
■DSB・IC3の画像について(Railfaneurope.netより)
 気動車タイプhttp://www.railfaneurope.net/pix/dk/diesel/dmu/MF-IC3/pix.html
 電車タイプhttp://www.railfaneurope.net/pix/dk/electric/emu/ET/pix.html
■DSB・IR4の画像について(Railfaneurope.netより)
http://www.railfaneurope.net/pix/dk/electric/emu/ER-IR4/pix.html                        


それでは最後に、「ダイヤフラムタイプ」のスタンダードなタイプ・・・旧英国国鉄の車輌をご紹介します。


イメージ 4

旧BR(イギリス国鉄) Class156気動車

【FreeFoto.Com http://www.freefoto.com/index.jspよりお借りしています。】
(該当ページ:http://www.freefoto.com/preview.jsp?id=23-25-21&k=First+TransPennine+Express

上の写真は、分割・民営後に各鉄道会社に承継されたClass156気動車(1987年リリース)で、イングランド中部をエリアとするTrans Pennine Express(First Group) のものです。ゴム製一体のダイヤフラムの先に緩衝装置も兼ねた分厚い幌枠が付いているのが特徴的です。旧BRの前幌付車輌はだいたいこのタイプで、幌付き車が先頭に来る際には、この写真では、幌から空気が若干抜けているように思われます。そして連結時には幌に空気がフルに入って膨らみ、両方の幌枠を合わせる、という感じになるのでしょうか。ダイヤフラム本体より、幌枠の方が厚みがあるように見えるのが非常に特徴的です。

また、幌と幌枠を保持する(というよりは車体と幌枠を保持しているようにも見える)幌吊的なパーツについては、前面ヘッドライト&テールランプのベゼル下から押し出し式の金具のようなものが装着されています。いずれのポイントについても、何せ実車をまだ見たことがないのであくまでも推測ですが・・・。

Class156のみならず、旧BRの車輌諸元とディーゼルカーの参考画像、それからイギリスの鉄道全般については、以下のリンクをご参照願います。

▲旧BRの車両諸元について(Railfaneurope.netより)
http://www.railfaneurope.net/list/uk.html
▲旧BRの気動車(DMU)の画像について(Railfaneurope.netより)]
http://www.railfaneurope.net/pix/gb/diesel/dmu/pix.html
▲旧BRの全般について(日本語)「英国鉄道との闘い」(麦雄さん)
http://hw001.gate01.com/longpreston/mugio.html




と、今回は外国の鉄道についてのお話になってしまいましたが・・・日本のこぢんまりとまとまった幌に比べて、やっぱり食べ物が違うからなのか(ホント?)、向こうの幌は大づくりというかダイナミックな感じがしますね。それはそれでまた面白そうで、ぜひ実車を確認してカメラに収めて来たいものです・・・F1かWRC観戦とセットで。