●第18回:一枚幌の装着方向

*今回の「貫通幌のガイドライン」は、「一枚幌の装着方向」です。


「一枚幌」は読んで字のとおり車両の片側にのみ幌を装備するタイプですが、どちらの側に幌を装備するかは、だいたい事業者ごとに決まっているようです。これまで私が観察(爆)してきた印象ですが、例えば、JRグループでいえば下記のとおりの傾向があると思われます。

1 JR車両の一枚幌装着方向


【貫通幌(一枚幌)の装着方向】<JR編>
JR北海道 …… 奇数側
JR東日本 …… 奇数側
JR東海 ……… 奇数側
JR西日本 …… 偶数側
JR四国 ……… 偶数側
JR九州 ……… 偶数側

ここで言う「奇数側・偶数側」とは、東海道本線に車両を置いた状態での車両の向きを表す用語で、「奇数側」が東京寄り、「偶数側」が神戸寄りとなります。もう少し具体的に言うと、例えば、JR北海道のキハ40が函館駅に居るとして、幌を装着しているのは長万部・札幌方面になります。また、JR四国では高松駅に停車中のキハ65+58の前幌は坂出、観音寺向きのキハ65が受け持っています。

ただ、JR九州については「偶数側」としましたが、車両所属区所ごとに若干のばらつきがあるようです(鹿児島総合車両所「本カコ」の475系は奇数側のクモハ475が前幌付き、等の例がある)。

こうして見てみると、一枚幌タイプの装着方向には、「箱根の関」ならぬ「米原の関」のようなものがあるのかもしれません(笑)。


2 私鉄車両の一枚幌装着方向


あと、私鉄で前幌・一枚幌付きの車両を持つ事業者については、概ね下のようになるでしょうか。

【貫通幌(一枚幌)の装着方向】<私鉄編>
東武鉄道 …… 下り方面側(伊勢崎線:北千住・伊勢崎方面、東上線:小川町・寄居方面)
京浜急行 …… 品川方面側(旧1000形4両組の例)
京王帝都 …… 新宿方面側(6430形Mc2連の例)
近鉄 ………… 上り方面側(難波、京都方面、南大阪線橿原神宮・吉野方面)
南海電鉄 …… 難波方面側
阪急電鉄 …… 三宮方面側(注:神戸線特急増結車の例)
西鉄 ………… 大牟田
茨城交通 …… 下り(阿字ヶ浦)方面側
*水島臨海 …… 下り(水島)方面側

京王とか、阪急とか若干特殊な例も挙げていますが、前幌(一枚幌)付きの車両を持つ事業者については、以上の通りになるかと思われます。


*一枚幌の車両を見て、どちら向きの車両か瞬時に分かる。

と書いたのは上のような事情によるわけです。何か抜け落ちている点等があれば、ご教示下されば幸いです。


3 実際の例


ではここで、同じ形式の車両でも、JR東日本と西日本とで幌の装着方向が違う実例を見てみましょう。

「テキスト」は115系1000番台の3両組です。編成については、以下のような構成になっています。

←奇数側 クモハ115-1000(Mc)+モハ114-1000(M')+クハ115-1000(Tc) 偶数側→

では最初に、JR東日本高崎車両センターのT1036編成です。


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クモハ115-1026等3連・吾妻線 万座・鹿沢口行き547M 2005年1月 高崎駅


高崎車両センター(当時は新前橋電車区) T1036編成
←大前 Mc115-1026+M'114-1036+Tc115-1026 →高崎

こちらは奇数側車のクモハ115-1026が貫通幌を受け持っています。ジャンパ栓がずらりと並んでいてなかなか幌とマッチしているように感じられます。スパルタンな幌には、やっぱりスパルタンなジャンパ栓が一緒にあったほうがいいですね。

また、幌枠の色が標準(?)のグレーでも最近よくあるブラックでもなく、白(アイボリー?)に塗られているところがまた特徴的です。これは高崎支社の標準の幌枠色なんでしょうか。

ちょっと話が逸れますが、下回りの所々に雪が付着しているのがいかにも「雪国に分け入る列車」の雰囲気を出しています。さぁ、これからもう一仕事してくるぞ、といった感じでしょうか。


イメージ 2
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クハ115-1220等3連・山陽本線 三原行き1325M 2004年1月 有年駅


次はJR西日本・岡山電車区の3連組D編成です。

岡山電車区 D16編成
←姫路・相生 Mc115-1541+M'114-1155+Tc115-1220 →岡山・三原


こちらは偶数側車のクハ115-1220が幌を受け持っています。やはり偶数側車はジャンパ栓の栓受だけでちょっと寂しい(?)感じがします。幌枠は最近スタンダードになりつつある黒、また前面方向幕も1枚目の写真の高崎車が白幕だったのに対し、こちらは岡山区115系の特徴ですがLED化が進められてきています。LEDは、シャッタースピードが速いとこの写真みたいに撮ったら表示が崩れるから趣味的にはちょっと嫌ですね(笑)。

でも窓のシーリングが黒Hゴムでまだ鉄仮面化が進んでいないのでまだちょっと嬉しい…。この夕方の三原行きも、これから兵庫・岡山県境の船坂トンネル越えの山登りに備えているところ。夕陽から少し身を隠し、こちらも広島県の三原までのロングランに向けて、さあ行くぞ、といったところでしょうか。


4 補足・車両形式と車両の向きの関係


イメージ 3
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加古川線・クモハ125-12 2005年1月 加古川駅


幌の話題からはちょっと逸れますが…といいつつ写真はまたもや幌付きの125系を挙げていますが…、JRの電車で系列の中の「本形式」と言えば、系列と同じ番号を付けた電動車(M)、あるいは制御電動車(Mc)ということになり、概ね編成の奇数向きにアレンジされることになっています。ですから、115系においても「クモハ115」が編成の奇数側に配置されていますし、モハ115と114の電動車ユニットも奇数側にモハ115、偶数側にモハ114、という順序でアレンジされています。

と、JR西日本125系電車なんですが、単行の電動車で一体何を…というところでしょうが、実は2組の台車のうち、駆動台車は片方だけで、1Mと言うよりは「0.5M」とでも言うべき車両なのです。で、駆動台車のある側は、奇数側の台車、つまりこの125系では西脇市方向の台車になっています。

ちなみに、幌を受け持っているのは、JR西日本としてはオーソドックスな偶数方向(加古川向き)となっています。ただパンタグラフについては、加古川線125系のうち、125-11とこの125-12は2基パンタ仕様となっているのですが、本来のパンタは偶数側のみの1基で、奇数側のパンタは霜取用となっているところが特徴的です(ですから冬以外は降りています)。

やっぱり、奇数向が「公式側」ということになっているのでしょうか、パンフレット等の広報資料で出てくる125系は、パンタが上がっていない幌なしの側から写されているものばかりです。反対側の前幌・前パンの顔の方がカッコイイのに……と思うのは「スキモノ」の思いこみなのかもしれません。


*次回の記事は…また来月になるかと思いますが、「幌が見栄えする角度」について予定しています。