◇【第2回】KTX・韓国高速鉄道

「海外の鉄道・バスの旅」、今回は韓国高速鉄道(KTX)についてのお話です。


前回記事(ソウル駅)では、列車の写真を撮るために改札開始時間よりも早く入れてもらったところで終わりました。で、今回はソウル駅のホームで撮ったKTXの車両を中心ににまとめてみました。

KTXの事業計画が策定されたのは1990年、2年後の92年6月に着工し、国家予算の約2割に達する総額22兆ウォン(約2兆円)のお金をかけて2004年4月1日から運行されています。

列車の運行系統は、韓国の鉄道のメイン・ルートとも言えるソウル-大田(テジョン)-大邸(テグ)-釜山(プサン)の京釜高速線と、大田から西南方向に分岐して益山(イクサン)、光州(クワンジュ)、木浦(モッポ)へと至る湖南高速線の2系統となっています。現時点で完成している高速新線区間は、ソウルから17.7km南の始興(シフン)分岐から大田、東大邸へ至る約220kmで、2010年にはさらに延長される予定(京釜高速線のほぼ全線)で、例によって沿線各地では駅の誘致合戦が激しく繰り広げられているのだとか。KTX開業までセマウル号で4時間20分を要していたソウル-プサン間441.7kmは現在2時間40分、高速新線延長後はさらに2時間10分まで短縮される見込みです。

<写真は全てクリックすると大きくなります>

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KTX・第29編成 2006年10月29日 ソウル駅4番ホーム


上の写真は、ソウルを10時ちょうどに出発する釜山行きのKTXですが…ホームは日本と比べてかなり低いヨーロピアン・スタイルで、これなら対向ホームからでなくても車両の足回りが十分撮影できますね(笑)。車両はフランスのTGVに似た感じ、というよりTGVそのもので、それもそのはず、フランス・アルストム社製のコリアン・カスタム仕様です。編成は、両端が電気機関車で、18両固定編成の客車を挟む20両編成となっていて、さらに機関車の次位の客車は電動車になっています。日本式に記号で表すと、以下のようになるでしょうか。

L-M-16T-M-L

ちなみに1編成全体の長さは388.104mで、JRの700系新幹線16編成404.700mより若干短くなっています。


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次は、エンブレムや行先表示等ディテールを撮ってみました。

※【左上】
先頭車側面にあしらわれたKTXのシンボルマーク。「KTX」の下のハングル文字は韓国高速鉄道」(ハングク-コソク-チョルト)という意味。
ちなみに「KTX」とは「Korean Train eXpress」の略。

※【右上】
機関車側面に輝くフランス・アルストム社と韓国の鉄道車両メーカー・ロテム社のエンブレム。
ロテム社は、現代精工、大宇重工業、韓進重工業各社の鉄道部門が合併して設立されたKOROS社が2002年1月に社名変更したもの。韓国最大の鉄道車両メーカーとなり、海外にも納入実績を持つ。KTXの車両は、当初の12編成がアルストム社製で、その後の34編成はロテム社によるノックダウン生産

※【左下】
LED式の側面行先表示板。ハングル(上)、アルファベット(下)、列車番号がローテーションで流れていく。

※【右下】
号車番号ステッカー。ハングル文字は「号車」(ホッチャ)という意味。


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17号車と16号車の連結部分


次の写真は、客車の連結部分で、ごらんのとおり連接台車になっています。もちろん(?)エアサス、ヨーダンパ付きで、車両をつないでいるロッドはスタビライザーでしょうか。機関車と客車の間の幌はゴムチューブ式(◇韓国・第1回:11年ぶりの韓国 参照)むき出しですが、中間部分の幌は完全に一体型のカバーで覆われているようです。

本来なら次はインテリアの写真…となるのですが、私が乗る予定にしているのはその後10:15発のムグンファ号。サッと中に入ってサッくり撮ってくればいいのでしょうが、ホームがヨーロピアン・スタイルということは…おそらく出発もヨーロピアン・スタイルだろうと思い、今回は止めておくことにしました。案の定、しばらくすると…日本のように発車時にベルやチャイムが高らかに鳴り響く、ということもなく、おもむろにドアが閉じ、機関車のインバータ・サウンドがひゅーん…と鳴ったと思うとスルスルとホームから離れていきました。写真を撮るのに夢中でそのまま持って行かれたら…それはそれでまたイイかも(笑)。


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ソウルに到着したばかりの第44編成


と…4番線のKTXが出てしまうと、対向ホームにまた1編成停まっていました。行先表示板はまだ「SEOUL」となっていたので、まだ到着後間もないものだと思われます。上の写真、そうです、このアングルでやっぱり1枚撮っておきたかったのです。ただ、ソウル駅は橋上駅舎なので、編成全体を写真に収めようとすると、どうしても後ろの方が隠れてしまいます。また、私のコンデジでは角度的にちょっと編成全体は入らなさそうな感じでした。位置的には、これでもホームの先端ぎりぎりまで寄っていて、これ以上鋭角で撮ろうとすると…ホームから出てしまうことになります。


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京釜電鉄線・南榮(ナミョン)駅のホームから ソウルに到着直前のKTX


そこで、旅行の最終日の午前中、広域電鉄1号線(京釜電鉄線)の南榮駅ホームから無謀にも走行写真を狙ってみることにしました。南榮駅は、地下鉄1号線・ソウル駅から南にひと駅行ったところにある島型ホーム1面2線の小さな駅で、列車線の敷地内に電柱がなく、ソウル駅の間近ということで列車のスピードも低いため、走行写真を狙うには最適の駅です。うーん…もう少しカメラもウデもよければいいのですが…それに編成の後ろは、あと一息というところで切れてしまっていますが、雰囲気だけは辛うじて伝わるでしょうか。

あと、余談になりますが…KTXの車両が、日本の新幹線スタイルが有力視されつつも、なぜTGVタイプのプッシュ・プルスタイルのものになったかについては、「反日感情」とかいろいろ言われているようですが、車両調達に際しての韓国側のオーダーが「車両を単に買うだけではなくて技術移転・供与もセットに」(つまりロテム社製の「コピー商品」の輸出許諾まで含む)ということで、見方によっては「えー何ソレ」みたいなその条件を飲んだのがフランスのアルストム社だったからだと思われます。こういう条件では、確かに新幹線システムを「オリジナル商品」として世界にプロモートしていきたい日本サイドとしてはさすがに受け入れられなかったでしょうね。

今回のレポートでは、乗り心地や内装の部分は全くチェックできなかったのですが、実際に乗車された方々のインプレッションもコメント等でお教えいただければ幸いです。


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ソウル駅2番ホームの京釜線0kmポスト(?) ハングルは「チョルト-キジョム」(鉄道基点?)と読める




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