●第20回:一枚幌の装着方向(3)JR東海の在来線用車両

今回の「貫通幌のガイドライン」は「一枚幌の装着方向」の3回目、JR東海の在来線車の「例外」についてです。

JR東海の在来線用の車種といえば…どういう車両を思い浮かべられるでしょうか。旧国鉄から継承した電車の113、115、119、123、211、213の各系列、JRとなってから新製された311、313系、急行・特急用の285、373、383系気動車の11、40、75、85系とほとんどの車種が前幌を装着している系列(埋込・収納タイプ含む)で、前幌のないのは117系と381系くらいのものです。JR東海は「新幹線のための鉄道事業者」というイメージがどうしても強いのですが、こうやって前幌付きの系列を列挙してみると何気に「前幌王国」(笑)ということに気付かされます。


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クモハ313-13等Y13編成 2006年2月 名古屋駅


上の写真は、ローカル運用から本線快速・新快速運用まで幅広く活躍するJR東海の「コミューター・ヒーロー」313系電車で、名古屋駅に停車中の豊橋行き快速列車です。JR東海の1枚幌装着方向は、既定では「奇数向き」となり(「●第18回:一枚幌の装着方向」参照)、ご覧のとおり奇数向車のクモハ313形が前幌を受け持っています。

その他、113系、211系、311系等本線・中央西線で運用される系列についても、奇数向車(クハ111奇数向車、クモハ211、クモハ311等)が前幌を受け持っており、中央西線では中津川・塩尻方向が奇数向きとなります……と、それだけならこうして記事にすることもありません。ところが、JR東海在来線車の前幌の向きにはいくつか特徴的な「例外」があります。例えば、以下のような例を見てみましょう。


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キハ75-502等4連 武豊行き区間快速 2005年1月 名古屋駅


上の写真は、これまたJR化後の1999(平成11)年に新製投入されたキハ75-400/500番台で、主に武豊線のワンマン運用で使用されていますが、朝・夕のラッシュ時には、名古屋まで「区間快速」として乗り入れています。前幌を受け持つのは写真のとおり500番台車なのですが…JR東海の既定パターンではこちらが東京側、つまり「奇数向き」のはずが、テールランプが点灯していることからお分かりのように、奇数側を向いていません。米原方面、つまり「偶数側」に前幌が付いています。

武豊線の配線に原因があるのでは…つまり大府で本線の名古屋方面に乗り入れるのにスイッチバックするような形になっているからではないか、とも考えましたが、地図で確認したところ、武豊線から名古屋方面へはそのまま方向転換せずに乗り入れできます。ちなみに、関西本線で運用される75系0/100番台、200/300番台についても、偶数側を向いている100番台、300番台が前幌を受け持っていて、さらに高山本線のキハ40・47についても岐阜駅停車時基準で見ると、米原方面(偶数側)に前幌が付いていますが、いずれも線路の配線から考えてもやはりその原因がよくわかりません。


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高山本線 キハ47-5001 飛騨金山行き普通 2005年3月 岐阜駅


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クハ118-5313等2連 2005年1月 名古屋駅


最後に、飯田線で運用されている119系電車の例ですが、119系は、奇数向きにクモハ119、偶数向きにクハ118の2両1ユニットとなっています。JR東海の既定パターンでいけば、クモハ119が前幌を受け持っている…はずなのですが、実際は偶数向きのクハ118に前幌が付いています。これも、色々考えてみましたが、理由がどうにもよく分かりません。強いて無理矢理こじつければ、辰野駅での配線の関係で、クハ118が辰野に到着する際には新宿側を向く、つまり中央東線では奇数側を向くことになるので、中央東線で運用される場合に備え、幌装着方向を合わせたのでは…やっぱり、かなり無理がありますね。

上の写真は豊橋でなく名古屋駅で撮影したものですが、119系はもちろん専ら飯田線で運用されていて、通常は線内で滞泊しています。しかし現在では「戸籍の上」では大垣電車区(海カキ)持ちとなっていて、検査時のみ豊橋-大垣間をこのように回送列車として往復しています…以上余談でした。


今回は、色々と言ってきた割には「例外」の紹介にとどまり、論考としてはいささか不完全燃焼の感がありますが、そのあたりの事情をご存じの方がおられましたら、ご教示いただければ幸いです。

次回は、以前に予定していた「幌が見栄えする角度」いえ、改題して「萌える幌の角度」と題してレポートします。