◇【第3回】KORAIL・セマウル号

「海外の鉄道・バスの旅」、前回記事ではKTXのいろいろな姿をご紹介しましたが、今回は2004年のKTX登場まで韓国の最優等列車だった「セマウル号」です。


セマウル号の前身は、1969年に設定された「超特急・観光号」で、その後1974年のソウル地下鉄・広域電鉄開業に合わせて改称されました。「セマウル」とは、当時の朴正煕大統領が推進した「セマウル運動」(「新しい農村運動」の意)にちなんだもので、朴大統領が暗殺された後、一時期その名称が廃止されたこともありましたが、1984年から再びこの名称となっています。

「両端ディーゼル動車のプッシュ・プル列車」となったのは1987年、以降2度の増備を経て、KTX開業まで韓国を代表する特急列車として全国の主要幹線を所狭しと走り回っていました(中間のセマウル専用客車を機関車が牽引するものもある)。KTX開業後はその動向が注目されていましたが、本数が削減されたものの、停車駅を増やした上で、KTXの連絡列車的な存在として今なお活躍を続けています。


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広域電鉄1号線・南榮駅ホームから 2006年10月


上の写真は、前回記事のKTXと同様に、ソウル駅から京釜・広域電鉄線を1駅南に行った南榮駅ホームから撮った、ソウル駅到着直前のプッシュ・プルタイプのセマウル号です。編成は両端ディーゼル動車に中間客車が5両の7両編成ですが…後で調べてみると、元は食堂車も連結した8両編成が基本だったようで、KTX開業後に食堂車が抜かれて7両になったのかもしれません。7両中、上の写真でディーゼル動車の次位の客車だけ窓回りの塗色が違っていますが、この車両が1等車に相当する「特室」(トクシル)で、残り6両が「一般室」(イルパンシル)というラインナップ。

両端の動力車を「ディーゼル機関車」ではなくディーゼル動車」と書いたのは…半室が客車になっているからで、PMCあるいはPP-DHC(Push-Pull Diesel HydrodynamicCar)と呼ばれています。下の写真は…同じ列車の「ケツ打ち」ですが…よく見比べてみると、ディーゼル動車の顔が編成の前後で微妙に違っているのがわかるでしょうか。「セマウル号パーフェクトガイド2004」車両編(Mineyukiさん「東アジア鉄道イソウロウ事務所」webページ)によると、上の写真のソウル駅向きの動力車がどうやら現代精工製、下の写真の釜山向きの動力車(幾分丸みを帯びていてパノラミックウィンドウが特徴)が大宇重工製のようで、いずれも1988年以降に増備されたものと思われますが、メーカーによってディテールに特徴があるとは…撮っているときには全然気付きませんでした(え?)。

もっとも今は現代精工・大宇重工は同じく鉄道車両製造の大手だった韓進重工と統合してロテム(Rotem)社となっているのは前回記事でも触れたとおりです。KTXが登場した今となっては…ずんぐりとした車体はいささか泥臭い感じもしますが…個人的には「だがそこがいい」といったところでしょうか(笑)。


次回は…前回記事の話の続き、ソウルから水原(スウォン)まで実際に乗車したムグンファ号をレポートする予定です。


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【参考書籍】
■「韓国の鉄道」-100年を迎える隣国の鉄道大百科-(中島廣・山田俊英著/JTBキャンブックス)
KTX開業後に改訂版がリリースされています。