◇【第8回】韓国鉄道博物館(1)概観

「海外の鉄道・バスの旅」、今回からしばらく昨年の韓国旅行のメインディッシュ(笑)だった「韓国鉄道博物館」のシリーズを続けていこうと思っています。


国鉄道博物館(富谷館)は、1988年1月にオープンし、「韓国鉄道の過去・現在・未来を一度に見られる」をキャッチフレーズとしているように、豊富な現車展示と資料展示が特徴です。しかも日本から輸入し、統一(トンイル)号として使っていたディーゼルカー9601型を実際に乗車可能なアトラクション用として動態保存しており、レールファンならぜひお奨めしたい施設です。

今回実際につぶさに展示車両や資料を見て回って、半日ずっと居ても全然飽きなかっただけでなく、韓国の鉄道マンの鉄道という存在に対する「心意気」のようなものを存分に感じさせていただきました。


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鉄道博物館・正門のレリーフ 2006年10月

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門を入るとまず目に入る展示館の偉容(?)


正門手前のチケット売場で入館料を払って門を入ると、まず正面に大きな展示館が見え、向かって右側に現車展示が、左側は動態保存のディーゼルカーの乗り場、飲食物の売店や休憩所があります。下の写真の方ですが、韓国国旗の下にある石造りの銘板には「鉄道文化殿堂」と刻まれています。

私が訪問したのが日曜日ということもあり、来客者の多くは小さい子どもを連れたお父さん・お母さん、その他は若いカプールがちらほら、といった感じでした。日本出発直前に関空で買った指さし会話本の解説によると、韓国では一人でフラフラと遊びに行くといった習慣があまりないようで(ホントかな?)、確かに私以外に一人で来たという風情の人は見かけなかったので、一人で何時間も飽きもせずに展示車両を眺め、写真を撮り倒していた日本の中年のおっさんはひょっとしてビシバシに浮いていたのかもしれません(笑)。

途中休憩所の前の喫煙コーナーで缶コーヒーとタバコで一息入れていたら、長玉にデジ一眼を抱えた(!)地元のレールファンらしきおニイサン方がやって来ましたが…彼等もやっぱり数人の集団でした。


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豊富な館内展示

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旧ソウル駅のレストラン


展示館は2階建てで、韓国の鉄道の通史や車両・施設の変遷、各種技術の解説や鉄道職員の制服の変遷(第二次大戦後しばらくは日本風の詰襟だった)に至るまで豊富な資料が展示されています。ただ惜しむらくは解説文のほとんどがハングルで、所々英語があるくらい、日本語は全くなかったことでしょうか。取りあえず「読む」だけなら直前に詰め込みでハングル文字を覚えてきたので読めますが…いかんせん意味がわかりません(爆)。ただ、日本語の発音に近い言葉もあるので、何となく雰囲気だけはつかめます(?)。もっと日本からマニアが大挙して押し掛ければ、また状況も変わってくるのかもしれません。

下の写真は、旧ソウル駅の中に設けられたレストランを復元したもので、解説文(ここは英語があった)によれば、韓国で「洋食」を出した最初のレストランで、丸テーブル(木のテーブルの上に二層になって重なっているガラス部分)には李氏朝鮮時代の硬貨が3000個埋め込まれているのだとか。


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1972年の電化時にフランスから導入した8000型交流電気機関車(資料写真)


次の写真は、実車は見かけただけでシャッターチャンスを逃して撮れなかったので、せめて展示写真だけでも…と撮ってみた8000型電気機関車ですが…フランス・アルストム社製(後に数両大宇重工がノックダウン生産)とあってゲンコツスタイルそのもの。今なお全車現役ということで、DLと同様に更新機はトリコロールのアラン・プロスト色(笑)に塗られています。その後電気機関車はこれまた今風のヨーロピアンスタイルの8100/8200型(シーメンス製)が1998年と2003年に投入されているようです(こっちは現車まだ見ていません)。

韓国で最初に電化されたのは…大幹線の京釜線ではなく、山岳路線の中央線(ソウル市内の清涼里から東海岸へ向かう路線)というところがまた興味深い。試行的な意味合いが強かったのでしょうか。あるいはバスに対抗して、ハイパワーの電気機関車を投入して中央線の時間短縮を図ったのでしょうか…。その後の電化はソウル周辺の地下鉄と相互乗り入れする広域電鉄線と、釜山や大邱(テグ)など主要都市の地下鉄の後は高速鉄道KTX、ということになるのですが、結局京釜線そのものは非電化のまま残るのかもしれません。


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今回は「概観」ということで、館内の簡単な見取図を上のとおり作ってみました。展示車両は次のとおりとなっています。

(太字は車内立ち入り可能なもの)
<蒸気機関車>
* ミカ3-161(1940年製)…旧「鮮鉄」のミカ-サ型
* パシ5-23(1942年製)…旧「鮮鉄」のパシ-コ型
* ヒョウキ13-11(1944年製)…狭軌(762mm)用
<ディーゼル機関車>
* 3100型3103
<電車>
* 9900系9904(Tc)…中央線のトンイル号(のちムグンファ号)用
* 1000系1001(Tc)…ソウル広域電鉄線用・日本製
* 1000系1115(Tc)+1315(M)…ソウル広域電鉄線用・大宇重工製
<ディーゼルカー>
* 672号車…1963年新潟鐵工所
* 9161型9163…狭軌(762mm)用・元はこちらが動態保存されていた。
<客車>
* 貴賓車16…旧「のぞみ」号用展望車(展望デッキは立ち入りOK)
* 貴賓車17…旧「あかつき」号用展望車
* トンイル号用No.13101客車
* トンイル号用No.13069客車…ムグンファ号塗色で休憩室として使用
* ピトゥルギ号(鈍行列車)用No.12061客車
* No.18011狭軌(762mm)用客車(あともう一両同型・車番不明あり)
* No.905暖房車
<その他>
* 狭軌用貨車(有蓋車と無蓋車各1両)
* クレーン車
* マルティプルタイタンパー(フランス製)


あとは下に料金・アクセス等をまとめておきます。

【韓国鉄道博物館・富谷館】
場 所:京畿道儀旺市月岩洞374-1
時 間:9時~18時(11月~2月は17時まで)
入場料:500ウォン(動態保存列車は別途300ウォン、展示館内パノラマ模型見学も別途500ウォン)
行き方:ソウル市内から、地下鉄1号線(-京釜広域電鉄線)各駅停車で約50分~1時間、儀旺下車
(駅を右に出て…水原方向に線路沿いを徒歩約10~15分)

次回は、まずは蒸気機関車の展示車両から始めてみます。