▼番外編:「トラックバック」とは何か?

今回の記事は、異文化交流考察第2考「差別について」から少し離れて、それこそ人によって考え方や意義がそれぞれ異なる(つまりある種の「文化圏」に分かれてしまう)ブログ特有の機能といわれる「トラックバック」について考えをまとめてみたいと思います。


自分のブログサイトを持つようになって約1年4ヶ月、この間にもらったトラックバックは40件、自分が打った数もほぼ同じくらいで決して多くはありませんが、ブログ論やコミュニケーション論、そして異文化交流考察とも関連して、考えるところが色々と出てきました。自分自身の「トラックバックポリシー」については、昨年の3月に「本当に訪問者が知りたい20の質問」の中で書いていて、考え方は今も基本的にはその記事のとおりなのですが、自分とトラックバックについての考えを異にする方々からのトラックバックについて、自分はどう考えるか、どこまでなら認められるのか、実際にはどのように対応するのか、一度まとめておくのもいいのかな、と考えた次第です。

なお、今回の記事は、ちゃあじ子さんの「コミュニティ論3ネット編」とわたりとりさんの「オレはシャイダン」を念頭に置きながら書いています。必ずしもダイレクトには関係していないのでトラックバックは止めときましたが…。


Q1 そもそも、「トラックバック」(以下「TB」)って何なんだろう?

A1

自分もブログサイトを持とうと思ったときにまず何だろう、と思ったのがこの「トラックバック」でした。

平たく言ってしまえば、もともとは「自分があるサイトの内容について言及し、リンクを貼ったということをそのサイト主に通知するための機能」ということになるでしょう。これまでのWebサイトではそんなものはありませんでした。自分でサイト主にメールを出すか、相手が掲示板を持っていればそこに書き込みに行って知らせるしかなかったのです。

この機能は、ブログサービスが供用されるようになって実装された機能です。実際はHTMLベースのWebサイトにも実装は可能で、ブログという形式に特有のもの、というわけではないようですが、TB機能のないブログサービスはほぼ皆無と言ってよく、実質的にはブログ特有の機能の一つ、ということになるでしょう。


Q2 いわゆる「TB返し」はマナーとしてした方がいいのかな?

A2

前項でも書いたように、本来TBとは、「自分があるサイトの内容について言及し、リンクを貼ったということをそのサイト主に通知するための機能」ですから、TBを相手に打った時点で「相互リンクの状態」になっています。そう考えればTBを打ってきた相手にTBを打ち返す「TB返し」には機能的な意味はそもそもありません。

ですから、TB返しをしなかったからといって責められる、ということは一般的にはないと考えていいでしょう。しかし、「TBを打つ」ことそれ自体をある種の儀礼的なあいさつのようなものと考えている人たちの中には「TB返しはマナー」と考えている層が確かに存在しています。とはいえ、それは全体的なマナーとして確立しているというよりはその人たちの「ローカルルール」というべきものでしょう。


Q3 TBを打つときは、相手方に事前に許諾を求めるのがマナーなのかな?

A3

確かに注意書き等でTBに事前の許可を求めている人、あるいは事後でいいからTBを打った旨をコメント等で通知してほしい、としている例は散見されます。しかし、何度も繰り返しになりますが、TBそれ自体は、言及してリンクを貼ったということをただ単に知らせているだけのことであって、自分の記事の中で、誰に言及しようと、はたまたリンクを貼るのも原則として自由なはずですから、TBに事前許諾やあいさつは本来不要かと思います。

ですから、マナーというよりもこれもTB返しと同じでその人の「ローカルルール」と考えていいでしょう。ただ、私がTBを打つ時は相手記事へのコメントの中に、補足のような形で「TB打ちましたよ」と事後でメッセージを織り込むことはあったりします。


Q4 TB先の記事への言及やリンクのないトラックバック(以下「言及なしTB」)を嫌う人がいるのはどうしてかな?

A4

(1) TBの本来のあり方からは外れる使い方だから
何度も繰り返しになってくどいようですが(爆)、TBは「自分があるサイトの内容について言及し、リンクを貼ったということをそのサイト主に通知するための機能」ですから、逆に考えれば、「TB先の記事についての言及やリンクはあって当然」なわけです。言い換えれば、「TB先の記事について言及もなく、リンクもしていない」のに通知機能としてのTBを打つのはなぜなのか、ということです。

(2) 自己の記事やサイトの「一方的な宣伝」と受け取られるから
言及なしTBは、結局TB先に自己記事へのリンクが貼られているだけで、TBを打った当の本人の記事には相手先の記事やサイトについて何ら情報がない、ということになります。だから悪くとらえると、アクセスの流れ的には、TB先からTB元への一方通行、つまりTB先の側には何らメリットのない「アクセスを奪う」行為にしか見えない、というようにも受け取れます。うがった見方をすれば、TB返しや事前の許可やコメント欄でのあいさつ、といった儀礼的な習慣はTBを「一方的な宣伝」としないための方法なのかもしれません。

(参考)
*Y!Bの場合は、TBを打つと、自記事の一番下の方に「トラックバック先の記事」という欄にTB先の記事のタイトルがリンク付きで載るようにはなっていますが、わかりにくいです。
*ライブドアブログは、TB先のリンクがないTBはハジく仕様になっているようです。


Q5 Yahoo!(以下「Y!B」)ブロガーに「言及なしTB」が多いと聞くけど、本当?

A5

これは、Y!B=「コミュニケーション中心主義」というイメージからそう言われているのだろうと推測します。つまり言及なしのTB……「「TBを打つ」ことそれ自体をある種のコミュニケーションやあいさつのようなものと考えている人たち」(松永英明氏の有名なTB論の記事「トラックバックをめぐる4つの文化圏の文化衝突――「言及なしトラックバック」はなぜ問題になるのか」でいうところの「ごあいさつ文化圏」「関連仲間文化圏」に相当か)はY!Bに多い、ということなのでしょう。

まぁ、何となくわかる気もするのですが、私がもらった40個のTBのうち、約1/4がY!B以外のブログからのもので、その中にはテキスト系サイト界隈では評判の悪くないFC2とかもあるのですが、ことごとくその全員が「言及なし、リンクもなし」でした。観測例の数としては少ないので何とも言えないところなんでしょうが…「言及なしTB」がY!Bの特徴、とまでは言い過ぎかな、と思われます。

むしろ、ブログサービスで決まる…ということよりも、そのブログの扱うジャンルによる側面も強いかな、と考えます。つまり、テキスト系、議論系のブログがTBを打つときは、やはりTB先の記事に言及して、その記事のパーマリンクも入れるということに自然になると思われるのに対して、例えば、趣味系だったら自分の記事と同じネタで記事を書いているから「関連仲間文化圏的に」TBとりあえず打っておこうか、みたいな感じでしょうか。


Q6 結局どんなTBが「いいTB」なのかな?

A6

ネット原理主義的に考えれば、つまりTBの本来の意味、ということで考えるのなら、くどいほど繰り返してきた「自分があるサイトの内容について言及し、リンクを貼ったということをそのサイト主に通知するため」に「言及あり・リンクあり」のTBを淡々と打つ、というのが「いいTB」だとは思います。そして別に事前の許諾を求めなくていいし、あいさつもなくてもよい、と。

ただ、ブログサービスが普及していくに従って、本来のTBの使い方とは異なったもの、つまりある種のコミュニケーションツールとしての使い方も多々見られるようになってきた、というのも事実でしょう。例えば、鉄道系のブログ界隈で、「東海道本線京口113系が運用から撤退する」という記事があったとして、「自分も同じネタで記事を書きましたよ」ということそのものを確認し合いたい、といった趣旨で打つ「関連文化圏」としてのTB。言い換えれば、「繋がること」それ自体を目的としたTB、とでも言えばいいでしょうか。

「繋がろうとする志向」それ自体は別におかしなものでもなんでもなく、「関連文化圏」的なTBがその中で完結しているのなら、ことさらに「本来の使い方から外れている、邪道だ」としてしまうのも行き過ぎかな、とも思います。


Q7 で、o_keke_nigel自身はどうしてるのかな、どうしたいのかな?

A7

私自身が打つのは相手の記事への「言及あり・リンクもある」TBですが、TB元の記事に私の記事への言及やリンクがなくても、記事の内容に関連があれば今のところはハジいてはいません。もちろん「エロトラバ」は瞬殺ですが(笑)。

ただ、これまで一度もコメントのやり取りをしたことがない人、つまり「可視化された交流をしていない人」から、私の記事について何も言及がなく、リンクもない…というTBをいきなり受け取ると、正直「自分のところの宣伝をしたいだけなのかな」「人の記事を踏み台にしたいだけなのかな…」と思うこともないわけじゃないです。

まぁ、どうしても相手さんの記事にこちらの記事へのルートを作りたい…のであれば、それこそTB返しをするとか(爆)、コメントを入れてみる、という手もあるわけですからあまり神経質には考えないようにしています。

ただ、本当に「交流」とか「コミュニケーション」とかいうことを考えるのなら、TB先の記事の読者だけでなく、自分の記事の読者にも「TB先の記事を見に行ってみたい」と思ってもらえるようなTBが理想的かな、とも考えています。


これまで、色々な方々がTBについての考え方を記事にされてきていますが、私の考えは以上のとおりです。

次回は、また異文化交流考察の第2項「差別について」の続きに戻りましょう。