●第25回:阪急7000系の前幌~神戸線特急

「貫通幌のガイドライン」各論編…今回は阪急電車の「前幌」のフィールドワークをレポートします。


…と言われても、「阪急電車で”前幌”って一体何???」な方々が多いのかもしれません。何と言っても阪急の車両で前幌を持つブツは、正雀車庫で大切に保存されているP-6(デイ100形)の116号車だと思われますが、京都線神戸線の急行・特急等の増結車編成…という「隠し技」があります(笑)。さすがに営業運転で前幌をなびかせて疾走するシーンは拝めませんが、増解結の拠点駅…河原町、桂、梅田、西宮北口、三宮の各駅では増解結及び回送シーンが観測可能です。

「幌」とくると何をおいてでもまず見に行きたくなってしまう私のこと、平日限定なのですが、夏休みを活用し、何とか時間を作って阪急三宮駅にその実際のシーンを観測に行ってきました。


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阪急三宮駅の案内表示 2005年6月


阪急の三宮駅は、島式ホーム2面3線というちょっと変則的な配線になっています。山側と海側の1、3番線が高速神戸、新開地と梅田を直通する特急が発着し、真ん中の2番線は三宮折返しの普通列車等が発着するという形で、2番線に到着した列車は両側の扉が開きます。

上の写真は、海側の壁に掲示された、三宮で後ろ2両が切り離される列車の案内表示です。神戸線で平日朝のラッシュ時に運転される10連特急は8連基本編成の梅田側に増結2連がアレンジされていますが、増解結のパターンは、以下のとおりです。

高速神戸・新開地方面--[三宮]--[西宮北口]-(西宮車庫)--[梅田] 

<1>増結車をつないで西宮車庫を出庫、以降三宮と梅田を一往復半、西宮へ回送・入庫
<2>出庫後、西宮北口で通勤急行に増結、梅田到着後西宮車庫へ回送、入庫
<3>出庫後、三宮へ回送、特急に増結、梅田で折返し(通勤特急)、西宮北口で解結、入庫
<4>出庫後、三宮へ回送、通勤特急に増結、梅田で折返し(特急)、三宮で解結、西宮へ回送・入庫

<注>上の表は、◎阪急神戸本線(平日朝)運行表(HankyuあまっこServiseさん作成)を参考にさせていただきました。

上の4つのパターンのうち、一番上の<1>は増結編成はつながれたまま出入庫…ということになりますが、残りは梅田、西宮北口、三宮で増解結のシーンを観測できます。フィールドワークの際の時間等は、上でご紹介したリンクなどでご確認ください。私が一昨年の夏に観測したのは上の表の<4>三宮で解結、西北へ回送・入庫というパターンです。


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三宮に到着した新開地行き特急、増結車連結面


上の写真は、9:16三宮発の新開地行き特急が到着したところです。8000系8両の後ろ(梅田側)に7000系増結編成2両をぶら下げた混結編成です。いかがでしょうか。幌枠こそシルバーですが、幌座、幌布、幌布をまとめておくための蝶番に至るまで車体とコーディネートしてマルーンに塗られています。

特急の三宮停車時間は2分程度、この間に幌を畳んで渡り板を上げて…と思われたかもしれませんが、実はこのように幌が既に畳まれた状態で梅田からやって来ました。つまり幌は連結時に全く使われていない、というわけなのです(爆)。これはいったいどういうことなのでしょうか…???

実はこのフィールドワークの後、解結→回送シーンを組み写真にして「おんぷちゃんねる鉄道掲示板」に投稿して聞いてみたところ、ある方からこのような回答をいただきました。

幌は固定編成で使っとるでつ
増解結運用には使ってないでつ
宝塚線は幌が無いでつ

つまり、神戸線8連編成は両側をMc車で中間車6両を挟んだスルー編成が基本なのですが、中には6両+増結2両で8連としているものがあり、増結編成の前幌はこの際に使われる、ということのようです。10連特急で運用の途中に増解結をする際には、おそらく停車時間短縮と人手の関係から幌を使わずに(つまり人の行き来をさせずに)すませている、ということなのでしょう(あるいは10連固定の上表パターン<1>の場合も幌を使用か)。


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前の8両が出発した後、ひとりたたずむ7000系増結編成

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前の基本編成8両が新開地へ向けて出発した後、運転士さんと車掌さんがすぐに乗り込むと、ほどなく西宮車庫へ向けて回送されていきます。タイミングによっては、梅田行きの特急を先に出したり三宮折返しの普通が2番線に入ってくるのを待つこともありますが、その間約1~2分程度。

改めて幌をよく見てみると、外側は車体色と同じマルーンに塗られていますが、内側はクランプレバーも含めて淡いクリーム色に塗られており、その色のコントラストが幌の静かな存在感を醸し出しています。足回りは、スパルタンなスカートと増解結簡略化のためのアイテムである電気連結器が表情を引き締めていて、この増結2両編成を甲陽線とか今津線南側とかの支線区で間合いに使ってもよさげな感じに思えてきます。



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西宮車庫に向けて回送中、王子公園を通過していく増結車編成 2005年8月


と、なるとやはりかっちりとした「編成写真」を撮っておきたくなります。ホームの配線上、停車中の状態でそれが可能なのは西宮北口で増解結するパターン、つまり上の増解結パターンの<2>と<3>なのですが、何せ平日の朝限定ですから、なかなかそんな時間は取ることができません。またいずれ、チャンスがあれば…とは思いますが、取りあえず走行中の後追いでもイイから(幌は三宮向きの車両に付いているため)撮っておこうと王子公園駅で待ちかまえてみました…。が、やはりコンデジということと、このウデのときめき、いや悲しさはいかんともしがたく、どうしてもブれてしまいます…。

この2両編成は梅田寄りがMc車&ダブルパンタの7035、前幌付きの三宮寄りの7155は、色々と床下にコンプレッサとかSIVらしきコンポーネンツが並んでいますが、Tc車です。7000系の面構えからすると、2丁パンタを持つMc車側に幌を…と強く希望したいところなのですがこればかりは西宮車庫の位置や三宮駅の配線を考えると如何ともしがたい所でしょう(笑)。でもどうせ増結用には幌使わないのだから……いえいえ、妄想はこれくらいにしておきます。

ちなみに神戸線での増結用の2両編成は、7000系(8本)のほか、8000系が3本、8200系が2本と6000系が1本となっています。なお、6000系の三宮寄りの前幌付き車(No.6116)はM'c車です。


次回も、「増解結」に係るフィールドワークのレポート…今度は連結シーン(成田エクスプレスN'EX)を予定しています。


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静かなる幌の存在感……阪急M'c6116