◇【第12回】1000系「初期抵抗車」~韓国鉄道博物館(5)

「海外の鉄道・バスの旅」、今回は韓国鉄道博物館の5回目として、展示車両の1000系電車「初期抵抗車」のスナップをご紹介します。

1000系電車は、1974年8月15日にソウル首都圏電鉄線(国鉄の京釜・京仁・京元・中央各線のソウル近郊区間)&地下鉄1号線が開業した際に日本から導入された韓国初のEMU(Electric Maltiple Unit=電車編成)で、長らく首都圏電鉄線の「顔」として活躍してきました。加減速度やその他技術的なことはウィキペディアをご参照いただくとして、まずはこの写真からご覧いただきましょう。



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トップナンバー編成の先頭車、1001号車(Tc) 2006年10月


首都圏電鉄線&地下鉄1号線用に新製された1000系電車は、国鉄持ちが126両、ソウル地下鉄公社持ちが60両。姿形は…ご覧のとおりJRの103系100/1200番台…というか301系と酷似していて、とりわけ前面窓の左右が斜めに引っ込んでいるところなどはまさに301系そのもの、といった感じです。ただ、韓国は標準軌なので、車体サイズも若干日本のものよりは大きく、日本の103系とかを見慣れた身にとっては、何となく間延びした印象があります。実際にサイズを比較してみると…以下のとおり、韓国の1000系の方が日本の103系等より幅が広く高さが若干低いのがわかります。

*JR103/301系 … 全長/全幅/全高 20,000/2,832/3,935(mm)
*KORAIL1000系 … 全長/全幅/全高 20,000/3,120/3,800(mm)

◎国鉄301系電車-Wikipedia(先頭車の画像も収められています)


写真の1001号車は1974年日本車両で、ブルーとクリームのツートンカラーは当時のピトゥルギ号(普通列車)客車やディーゼルカーと共通の塗色でした。301系はアルミ製でしたが、こちらは鋼製の車体で、開業当初は中間電動車4両を制御車(日本風にいうとクハ)で挟んだ4M2Tの編成で運用されていました。

前面の方向幕は…「インチョン(仁川)」となっていて、側面は、最も運転席よりの扉の上に何やらサボみたいなプレートが付いています。下の写真は、その部分を接写したものですが…何か時間帯の表示の上に書かれているのはどういう意味なのでしょうか…。読むだけなら「ヨ-ソン・ノ-ヤク-ジャ-ジョン-ユン」と書かれているのは解るのですが…お分かりの方がおられましたら、ぜひご教示くださいませ。


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こちらはノックダウン生産の2代目塗色車


次の写真は、先程の1001号車の反対側で、2代目塗色の先頭車と中間電動車が連結されています。こちらはいずれもノックダウンのライセンス生産車で、1977年大宇(DAEWOO)重工製。前面の方向幕の表示は「アンサン(安山)」となっていて…結局1M2Tの珍編成、ということになるのでしょうか…っていうか電動車は2両で1ユニットなので、これでは自走は無理ですね(笑)。

その後、1000系はさらに電動車と付随車(日本風のサハ)を4両組み込み、以下のような6M4Tの10両編成になります。

←水原/仁川/安山
Tc(1001)+M(1201)+M'(1301)P+T(1801)+M(1401)+M'(1501)P+T(1901)+M(1601)+M'(1701)P+Tc(1101)
清涼里/議政府北部
(「P」はパンタグラフ)


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1115号車のディテール


この2両は、1001号車と違って中に入ることができますが、Tc1115の中は、上の写真でお分かりのとおり昔の農機具とかわら細工の民芸品の展示スペースとなっています。車両展示エリアの一角では、むしろを敷いてわら細工の製作実習をやっていて、地元の小学生でしょうか、アジュンマ(おばさん)に作り方を教わっていました。

下の方は、KORAILのロゴや車番表示などですが、左側のハングルは、「ハングクチョルト(韓国鉄道)」と読めます。右側の新1000系(モデルチェンジ後)をモチーフにしたイメージキャラクター…「チョンチョルくん(電鉄くん)」とか言うのかな…(?)


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中間電動車1315号車の内部

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1315号車のディテール


中間電動車1315号も中に入れますが…こちらは当時の使用状態のまま保存してあり、広告や路線図もそのままです。この車両も大宇重工製のノックダウン車ですが、足回りを見ていると、駆動部分には、日立や東芝といった日本製のコンポーネンツを多用しているようです。それから、パンタグラフですが、何やらベースの部分が結構賑やかですが、地下鉄線内が1500Vの直流、国鉄の電鉄線が25000Vの交流と異なる方式で電化されているため、2電源対応の交直流車となっています。

その後、1000系は先頭車両の2度にわたるフルモデルチェンジを経て1996年まで増備が続きました(最終的には790両)…といっても、最終型は当初導入時の初期抵抗車とは実質的には別系列のようなものとも言えるでしょう。中間電動車については、編成の組み替え等が行われたりして今なお現役の車両もあるようですが、初期抵抗車の先頭車両については、2004年6月に現役から引退、こうして現在この博物館で展示されています。


次回は、1960年代に活躍した日本製ディーゼルカーの展示車両のスナップを予定しています。



【その他参考文献・webサイト】
◎「韓国の鉄道 100年を迎える隣国の鉄道大百科」(JTBキャンブックス:中島廣氏、山田俊英氏)
◎「韓国鉄道の旅 KTXで拓く新しい韓国の旅」(JTBキャンブックス:中島廣氏、山田俊英氏)
◎「韓国」夜の首都圏電鉄線にイソウロウ ~第2部 京釜電鉄 初抵抗電車~
(「東アジア鉄道イソウロウ事務所」MINEYUKI氏)