◇【第13回】「ニイガタ動車」672号車~韓国鉄道博物館(6)

「海外の鉄道・バスの旅」、今回は韓国鉄道博物館の6回目として、展示車両の日本製ディーゼルカー「ニイガタ動車」672号車のスナップをご紹介します。

対韓戦後補償・技術供与の一環として日本製のディーゼルカーが導入されたのは1963年、当初はソウル近郊区間のローカル運用に使用され、1974年に首都圏電鉄線が開業すると、順次地方へと転出していきました。「韓国鉄道の旅 KTXで拓く新しい韓国の旅」(JTBキャンブックス:中島廣氏、山田俊英氏)によると、韓国国鉄に導入された日本製ディーゼル動車は159両、製作メーカーは新潟鐵工所(64両)・川崎車両(現川崎重工)(5両)・近畿車両(51両)・日本車輌(39両)の4社でした。

まずは展示車両のスナップをご覧ください。


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写真の672号車は、1963年新潟鐵工所製。車体のイメージは日本のキハ20系を張り上げ屋根にしたような感じでしょうか。180馬力のエンジンを2基搭載したハイパワー車で、さしずめ「韓国のキハ52」といったところですね。ただ、前記の「韓国鉄道の旅」によれば、ディーゼルカー2両の間に客車を1~3両挟み込んで走らせるというなかなか鋭い(?)使われ方だったようで、159両のうち約1/3にあたる49両が事故による廃車、しかもうち8両は火災事故という過酷な運命をたどったようです。それだけ縦横無尽に韓国国内を駆け回り活躍したことの証左…とも言えるでしょう。

この672号車の展示場所が、正門を入ってすぐの目立つ場所にミカ3形と並んで置かれているのは、それだけ韓国鉄道関係者に評価されている車両だから、とまでは言い過ぎでしょうか。これら日本製気動車は、国内製のNDC(ニュー・ディーゼルカーの略)が1984年に登場すると急速に廃車が進み、1997年初めに運用から完全撤退となりました。


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672号車の案内板 「ニイガタ製」と書かれている

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車内の座席配置

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台車部分


最初の写真を見ると、ドアの部分に階段が付いていて、中に入れそうな感じがしますが、実際はドアは施錠されていて残念ながら車内に立ち入ることはできませんでした。車内は時間や期間限定で公開、ということかもしれません。ということで、ドアの窓から何とか撮ってみた車内の様子ですが…車端部はロングシート、ドアとドアの間はクロスシートといったところで、日本の車両と同じような座席アレンジです。

その次は台車部分の写真ですが…ちょっと写真では見にくくなっていますが、近畿車両のKD206E台車を履いています。軸受部分は「NACHI」ブランド・不二越製でこれまた日本製です。


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今回の記事もまた写真が多くなってしまいましたが…最後の写真は展示館の中で撮ったもので、登場当時の車体塗色がわかる貴重なものです。

上の行は「ディージェルドンチャ(ディーゼル動車)」(ピトゥルギホ:ピトゥルギ号)と書かれており、下の行は、「1963ニョン イルボン ニイガタサ チェチャク」(1963年 日本・ニイガタ社製作)、「マリョク:180HP×2キグヮン、ソクド105km/h」(馬力:180HP×2機関、速度105km/h)と書かれています…これくらいなら何とか読めるか(笑)。

次回も日本製気動車、動体保存されている「カワサキ動車」観光列車の予定です。



【参考文献・webサイト】
◎「韓国の鉄道 100年を迎える隣国の鉄道大百科」(JTBキャンブックス:中島廣氏、山田俊英氏)
◎「韓国鉄道の旅 KTXで拓く新しい韓国の旅」(JTBキャンブックス:中島廣氏、山田俊英氏)