●第28回:福フチS9編成~「前幌・前パン」観測記録

「貫通幌のガイドライン」各論編……今回は、福知山運転所の113系・S9編成(クモハ112-5309+クモハ113-5309)の観測記録です。


国鉄/JR電動車の「これまでの伝統」(?)を破って、先頭車の前位側にパンタグラフ(冬季の霜取用)を持ち、しかもその一部は前幌付きの113・115系「萌える編成」が福フチ(福知山運転所電車センター)に存在していることは「第22回:前幌・前パン観測記録~福フチの食パンカフェオレと小浜線125系 」で触れたところですが、今回の記事は第22回の記事に続く「観測記録」です。

その前に、この「前幌・前パン」の編成が存在している要因を再度整理しておきましょう。


※福フチの113系(S・N編成)、115系(R編成)の種車は、モハ112(M')+113(M)、モハ114(M')+115(M)の中間電動車ユニット。

※いずれもパンタグラフはM'(モハ112、114)の後位側に1基がオリジナル。

※中間電動車ユニットから先頭車化改造を受けた際に、貫通幌はJR西日本の既定パターンどおり偶数側に装着。
 →クモハ112/クモハ114(M'c)に前幌(但しN編成のクモハ112-3800番台には前幌なし)。

※その後、冬季において架線の霜取用として、パンタを受け持つクモハ112/114の前位側にもパンタグラフを増設。
 →S・R編成の「前幌・前パン」化


もしこれらの編成がJR東日本や東海で組まれたとすれば、幌装着方向の既定パターンから考えて、前幌を受け持つのはパンタグラフを持たない奇数向き車のクモハ113/115となり、「前幌・前パン」は成立しないものと思われます。

逆に、同様に前位側に霜取用パンタが増設された加古川線クモハ102/103-3550番台(8編成中3編成)の場合は、パンタを受け持つのがクモハ103なので、JR東日本や東海の例であれば「前幌・前パン」が成立した、と考えられるでしょう。

つまり、JR各社による幌の装着方向とパンタグラフを受け持つ電動車の組み合わせの妙によって成り立つのが「前幌・前パン」だということが分かります。


……とまたまた例によって、前置きが長くなってしまいましたが、まずはこちらの写真からご覧いただきましょう。


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1150M(17:48発園部行き) 2006年7月 福知山駅


上の写真は、今回の「観測対象」S9編成で、手前が前幌を受け持つクモハ112-5309ですが、冬季以外は残念ながら(笑)、このように前位側パンタはしっかりと折り畳まれています。この画像は、「旅のようなもの」書庫の記事◆Vol31:播但・山陰・福知山~個性的な車両群でも触れましたが、昨年の夏に但馬出張からの帰途に福知山へ立ち寄った際のスナップ。「何かの手違いで」前位側のパンタも上がってくれないかなぁ……との妄想も空しく、クモハ112-5309は前位側パンタをガッツリと降ろしたまま、園部へと向けてスルスルと出発していきました。

夕陽を真っ向から浴びて福知山駅の高架ホームを遠ざかっていくその姿を見ながら、私は「今度の冬こそ、前パンの上がった勇姿を観測するぞ」との思いを新たにしました……とまで言うと言い過ぎになりますが。

その後、「第22回:前幌・前パン観測記録~福フチの食パンカフェオレと小浜線125系 」のとおり、昨年の11月、小浜へカニを食べに行く道すがら115系食パン・カフェオレの「前幌・前パン」の観測に成功しましたが、そうなると、やはりきっちりとした形式/編成写真を撮っておきたいところで、次の観測機会を狙っていました。


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337M 東舞鶴行き 2007年1月 綾部駅


1月の第一土曜、正月休みに京都の実家に預けた子供たちを迎えに行くことになり、休日に単独行動ができる機会はそうそうないこの身、些か遠回りにはなりますが、福知山経由で実家へ帰るべく神戸の自宅をクルマで出発しました。観測対象として選んだのは昨年11月と同じ福知山12:49発の舞鶴線337Mのスジです。

337Mの運用(運番43)は、次のようなスケジュールで動いています(平日/土/日祝共通)。

<337M以前省略>
→<337M>福知山(1番線)12:49発…綾部13:01/03…東舞鶴13:31着
→<340M>東舞鶴14:15発…梅迫14:34/35…綾部14:43着
→<341M>綾部14:53発…東舞鶴15:22着
<以降省略>
(太字は撮影場所での列車発着時間)


上の写真は、念願の113系「前幌・前パン」編成のスナップ、綾部駅です。113系「2パンタ先頭車の勇ましい姿」(鉄道ピクトリアル誌No.653/1998.5「111・113系電車の現状」より)を夢見てここにたどり着くまで長い道のりでした。

いかがでしょうか……?

「所詮ゲテモノ」と笑わば笑え。こういう国鉄伝統のPS16形菱形パンタと幌の組み合わせを見ていると……ほとんど旧型国電、と言ったところでしょうか。

ただ惜しむらくは、天気が良すぎて、ホームの影が車両に懸かってしまっているところで、どうしても「あと一息」欲が出てきてしまいます(家に帰ってPCに取り込んだ後もガンマ値とかコントラストとかセッティングをいろいろいじってみましたが…ちょっと残念)。

それに、いわゆる「ケツ打ち」ではなく、文字通り前パンを振り上げてやって来る「絵」がほしいところです……ってゼイタクなやっちゃなぁ(笑)。


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舞鶴折返し、綾部止まりの340M 舞鶴線梅迫駅


というわけで、今度は東舞鶴で折り返して綾部へと戻ってくるS9編成を狙うべく、舞鶴線内の駅へと移動することにしました。となると、編成撮りをしやすい駅は、対向ホームになっていて、クルマも止めやすい梅迫駅ということになります。綾部の街中からは、国道27号線を北上してゆっくり走っても15分ほどで着きます。時間は十分にあるので、一旦山陰線を福知山寄りに一駅分移動、高津駅で別の列車を撮ってから梅迫駅に向かいました。

上の写真が、綾部へと戻ってくるS9編成の「前パンを振り上げて向かってくる姿」ですが……なかなか物事はうまくいかないものです。この梅迫駅は、パンタの着線確保のためなのか、ホームの部分では架線がかなり低い位置にオフセットされており、せっかくの前パンがひしゃげてしまってかなり窮屈そうに見えてしまいました。天気は駅撮りには都合のいい薄曇りだったのですが……またもや残念。

本来なら、ここで撤収の予定(実家へ行く時間があまりに遅いと「また」両親に怒られる)だったのですが、事前のリサーチで調べた、15:30頃に高津駅を園部へ向けて出発する別の2パン編成の運用を狙うことに予定を変更し、再び綾部市内へと向かいました。そのレポはまた次回の記事で。


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【「福フチ2パン編成」撮影のために】
◎「運用表」
「山陰線・福知山線の113系」(ですかばりさん)作成。
福知山運転所のMc2連編成(S/R/N編成)の運用、冬季限定2パンタ編成の運用を網羅。非常にありがたかったです。

◎ジェー・アール・アール「普通列車編成両数表」
~年2回(夏・冬)刊行。この資料と上のサイトに「えきから時刻表」で各駅の発着時間を確認してプランを立てました。

◎高津-綾部-梅迫各駅の位置関係
マピオンhttp://www.mapion.co.jp/c/here?S=all&F=mapi4711682070527001259(1ヶ月間限定)から確認できます。


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舞鶴線梅迫駅のスナップ