◇【第19回】首都圏電鉄線・九老駅

「海外の鉄道・バスの旅」、今回は首都圏電鉄1号線の拠点駅の一つである九老(クロ)駅のスナップを中心に電鉄線の姿をご紹介します。

首都圏電鉄1号線は、北は京元線の逍遙山(ソヨサン)からソウルメトロ1号線(清涼里:チョンニャンニ~ソウル駅)を間に挟んで南は京釜線の天安(チョナン)までを結び、途中九老から分岐して仁川(インチョン)へと向かう京仁線を含む全長約160kmの路線です。イメージ的には、JR西日本の「アーバンネットワーク」(敦賀米原-京都-大阪-三ノ宮-姫路)で大阪市内が地下鉄になっているようなもの、といった感じでしょうか。

路線図や路線の沿革、各駅の詳細については……首都圏電鉄1号線 -Wikipediaをご参照いただくとして、まずはこの写真からご覧いただきましょう。


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首都圏電鉄1号線(京釜電鉄線)・九老駅 左が清涼里、右が議政府行き 2006年10月


上の2枚の写真は、儀旺(ウィワン)の鉄道博物館から京釜電鉄線でソウル市内に引き上げる途中に九老で途中下車してスナップしたものです。九老駅は、先にも書いたとおり仁川への京仁電鉄線が分岐する5面9線のホームと、その東側に列車線(ホームなし)を2線持つ拠点駅で、配線の詳細は「韓国」夜の首都圏電鉄線にイソウロウ~第2部 京釜電鉄 初抵抗電車~(「東アジア鉄道イソウロウ事務所」(MINEYUKIさん)をご覧下さい(今回は何かこのパターンばっかり)。

1枚目の写真は列車が並んでいるシーンですが……これはどちらも1号線の現在主力となっている5000系電車で、ともに1編成が10両となっています。パワーユニットは、東芝が技術協力したVVVFインバータで、【第12回】1000系「初期抵抗車」~韓国鉄道博物館(5)でご紹介した1000系初期抵抗車を置き換えるために大量に投入されました。この系列も1000系と同じく、地下鉄線(直流)と電鉄線(交流)に対応した交直流車です(MT比はTc-M-M<P>-T-M<P>-T1<CP>-T-M-M<P>-Tcの5M5T:Pはパンタ、CPはコンプレッサ)。

右側の車両が、42編成ある初期型・従来型のもので、左側が通称「トングリ(丸形)」と呼ばれる増備車(43番編成~66番編成)です。今回はスナップできなかったのですが、67番編成からは「新トングリ」と呼ばれるさらに丸みを帯びたものとなっています。

で、2枚目は左側の清涼里行きが出発した後になお停車中の議政府行きですが…京元線方面からの折返し列車です。本来なら編成全体を収めたいところなのですが…私の撮影位置(ホーム先端)からはこのアングルが精一杯でした。ちなみに、先頭車のドアの上にある白いプレートの文字、1000系保存車の記事でもnaojazeeraさんにご教示いただいた「ヨソン-ノヤクジャ-ジョンヨン6:30-9:00」ですが……さらに調べた結果「女性・老弱者専用」という意味と判明しました(naoさん、”ノヤクジャ”の部分分かりました。ありがとうございました)。


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九老・駅名標 前駅(P142)は「加山デジタル団地」


ちょっと余談なんですが、韓国の観光ガイド等を読むと、「地下鉄には物売りがやって来る」との記述をしばしば目にしますが…それは本当です。といっても別段怪しげな人たちでも何でもなく(正式なライセンス制ではなく当局黙認とのことですが)、主に日用雑貨の入ったカートを引いて各車両に現れ、それこそTVショッピングのマーフィー岡田顔負けの口上で使い方の実演をやってくれます。

私が儀旺から九老まで乗った電車で見かけたのは、チョー・ヨンピルをちょっとインテリ風にした眼鏡のオジサン(実は同い年くらいだったりして)で、「栗の皮切りハサミ」を売り込んでいました。リズミカルな口調でハサミの説明をしながら(何言ってるのかはわからんけど)、実際にハサミを使って栗の皮を巧みに剥いてみせます……おいおい、皮は床に落としっぱなしかい、と思いきや、ひとしきり説明が終わると、カートからほうきとチリトリをちゃんと出してきてささっと掃除をしていきます。

で、その後にやおら「サムチョノン、サムチョノン(3,000ウォン)!」と売り込みにかかるという手順です。値段の設定が丁度いいのか、それがまた結構売れる。おばちゃん中心に10個くらいは売れたでしょうか……実は私も思わず「チョギヨー(すんません)!」と言いそうになりました。でも栗の皮むきなんてめんどくさいことは絶対にやらないと思ったので思いとどまりましたが(笑)。

この「地下鉄の物売りのおじさん・おばちゃん」あと何回か見かけましたが、何せ地下鉄は1編成10両もあるので、短時間乗車では出会わないことの方が多いのかもしれません。ともかくこの人たち、どんなに車内が混んでいても根性で回ってきます。さすがに超満員の車内では大声で売り込み、というわけにはいかないようでしたが……。


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後は九老駅ではありませんが、沿線のスナップを3枚ほど。一番上の写真は…新吉(シンギル)駅のスナップで、この駅の各駅停車ホームには新交通システムのようなホームドアが付いていました。確か1号線ではこの駅だけだったように思います。で、真ん中の写真は車両側面に貼られたKTXの広告。何かバイクとの組み合わせが何とも妙ですが……。

そして最後が電鉄線電車から見たKTXのショットです。機関車のパンタが上がっていますから……この車両は編成の後ろ側(前側のパンタは下がっている)、つまり併走シーンだと分かります。一般の通勤電車と同一の目線でのKTXの走行シーンは、「新・在直通」の韓国KTXならではの風景と言えるでしょう。


と、これで「韓国の鉄道シリーズ」は一旦終了です。あとは2回ほど「バス編」の記事を続けたいと思います。