●第32回:韓国の鉄道車両の連結幌(3)

今回の「貫通幌のガイドライン」は、韓国の鉄道車両の貫通幌の3回目です。

前回は、韓国鉄道博物館に静態保存されているトンイル号/ピトゥルギ号用客車の連結幌でしたが……今回は広域電鉄線の電車で使用している連結幌を見ていきたいと思います。




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ソウル・首都圏電鉄1号線5000系(初期型) 2006年10月 九老駅

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JR東日本E231系電車連結面 2006年10月 水道橋駅


上の写真は……1号線の主力として活躍する5000系電車のスナップですが、連結面で使われている連結幌は、下の写真のような幌布のヒダが極端に少ないコスト重視の簡易なタイプです。

どういうわけか、JR東日本E231系の写真になっていますが(笑)、平たく言ってしまえば、韓国で5000系電車の連結面を取りそこねてしまったので、同じタイプの幌を使っている車両の手持ち画像で代用しました(すいません)。ちなみに、外幌(転落防止幌)の形状やレイアウトについても、日・韓でほぼ同じになっています。この5000系自体パワーユニット東芝の技術協力を受けて作られたものなので、幌についても世界シェア30%を誇る成田製作所あたりのものなのかもしれません。

いかがでしょうか。構造も比較的シンプルで、JR東日本では他に「走るんです」209系にも採用されている標準的なタイプで実用的なのかもしれませんが……些か素っ気ない感じがして個人的な萌え度はいま一つといったところでしょうか。


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5000系増備車(トングリ)の連結面 2006年10月 南榮駅


では、次のブツはいかがでしょうか。この画像は、「トングリ」と言われる5000系の増備車(43番編成以降)で使われている連結幌ですが……これが最近の「トレンド」(?)ジャバラ状のダイヤフラムタイプの幌です。ゴム製の一体型ダイヤフラム(新幹線の連結幌をイメージしていただくとわかりやすい)をジャバラ状に組み合わせたもので、幌骨などの複雑な構造物を減らし、しかもフレキシビリティもある…という機能面はともかく、何と言っても幌はジャバラ状のものがイイですね。

で、次の写真はオマケなのですが……その「ジャバラ状ダイヤフラム」幌が先頭車に付いている状態のものです。


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イギリス・New Southern Railway Class377電車



前回に続いてまた韓国以外のブツですが……この車両は、航空機メーカーとしても有名なBombardier(ボンバルディエ)社製の「Electrostar」(エレクトロスター)と呼ばれるイギリス・ニューサザン鉄道の第三軌条集電方式の電車・クラス377ですが……この車両の幌は「ジャバラ状ダイヤフラム」の幌布に、前回記事で紹介したアメリカン・スタイルのセンターバッファタイプの幌枠の組み合わせでおそらく連結した状態でそのまま金具等で固定することなしに幌を密閉できる構造になっているものと思われます。この幌も、近頃ボンバルディエ社との技術提携を進めている日本の成田製作所製なのかもしれません。


と、3回に分けて韓国鉄道車両の連結幌を見てきましたが……韓国の鉄道も、かつての日本と同様に、外国の技術を移転・導入する中で消化して自らのモノにしていった、という歴史をたどってきましたが、その系譜は、1)日本(広域電鉄・地下鉄電車)2)アメリカ(機関車・客車など)3)ヨーロッパ(電気機関車、客車、KTXなど)と大別すれば3つに分かれています。そして、その流れはこれまで見てきたとおり「連結幌」の形態にもよく現れています。

1)ジャバラ状の幌 ……日本
2)「センターバッファ&板バネ押し出し・保持式」の幌 ……アメリ
3)ゴムチューブ状の幌 ……ヨーロッパ

いわば、「幌から見える鉄道」といったところでしょうか。私には知識がないのでよくわからないのですが、信号システムなどの保安装置の面から見てみてもまた興味深い点が見つかるかもしれません。


次回は、また日本の「幌」に戻り、以前の「総論編」で抜けていたところ……「幌座のいろいろ」について予定しています。