◇【第21回】ソウルの市内バス~韓国バスシリーズ(2)

「海外鉄道・バスの旅」、韓国・バス編の2回目は……ソウルの市内バスのスナップです。

韓国の首都・ソウルの市内バスは、約300系統とも言われる複雑な路線網を持ち、地元の人でも自分が常日頃乗る路線以外のことは分からないとも言われています。また、「市内バス」との字面から、日本的な公営交通事業者のイメージを持たれる方も多いかもしれませんが、実際は市の交通局のようなものはなく、中小のバス専業の事業者が乱立し、それぞれてんでばらばらに路線網を伸ばしていました。

そして何よりも特徴的なのはアグレッシブな「スポーツ・ドライビング」。ラクション重視の低めのギアの多用、そして「車間を空けたら負け」と言わんばかりのハードなブレーキング、果てはバス同士のバトル等々、旅行者の乗車レポートを読んでいるとまるでロデオでもやっているかのような感すらあります。まさに「東洋のラテン系」(そういえば南フランス・アビニヨンのバスとかタクシーもメリハリの効いたなかなかワイルドな乗り心地だった)。

過去2回の訪韓を通じて、私自身は地下鉄には乗ったことがあっても、実は市内バスには乗ったことがありません。次の訪韓の機会には(何年後かはわかりませんが)、ぜひともそのワイルドな乗り味を堪能してみたいと思っていますが、今回の記事では、昨年10月の訪韓時の最終日に宿泊先のホテルの近辺等でスナップした市内バスの勇姿をご紹介します。


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退渓路2街バス停 2006年10月

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幹線バス・202系統(現代エアロシティ)


一番上の写真は……宿泊していた明洞のホテルの玄関から歩いて15秒ほどの至近にあるバス停「退渓路2街」(トゥゲロ-2[イ]ガ)のスナップです。バス停のモノグラム、おなじ絵柄で色違いのものが2つおダンゴのように並んでいますが、これは青地が「幹線バス」、緑地が「支線バス」の停留所であることを意味しています。ソウル特別市は、複雑でわかりにくい市内バス路線の再編に取りかかり、2004年に次のような大幅な改変を行いました。

※路線網の整理とバス塗色の色分け……青(幹線)、緑(支線)、黄(循環)、赤(中長距離)
※運行エリア、路線種別による系統番号のパターン化(例:支線は4桁番号)
※事業者の準公営化(市長直下に再編)

で、次の2枚はバス停に次々とやってくる幹線バスのスナップ。文字通り停留所に「飛び込んでくる」といった感じで、ちょっと大げさに言ってみれば……まるでF1マシンがピットへ突進してくるかのような迫力があります。路線網が再編されても、「スポーツドライビング」は健在、といったところでしょうか(笑)。

このバスは現代自動車製の「エアロシティ」、前面のセーフティウィンドウの形はまさに提携している三菱の路線バス「エアロスター」シリーズそのままです。側面の広告に「KB Card」とありますが、これは韓国版Suica、あるいはオクトパス(香港のバス/地下鉄カード)に相当するソウルの地下鉄/バスのストアードフェア・システムのカードです。


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支線バス・2233系統(大宇BS106)


今度のスナップは……東大門前を通過していく緑色のボディの支線バス、DAEWOO(大宇)製です。

走り去るバスのリアビューを捉えるのは、鉄道写真のいわゆる「ケツ打ち」と同様の難しさがあります。この写真でも、構えた瞬間は「もらった!」(何を?)と思ったのですが、ボディ全体を形式写真風に収めようとワンテンポ待ったその瞬間にキアの白い小型車とかバイクにササっと入られてしまいました。でも、「当時の街の雰囲気がよく分かる記録写真」と割り切ってご覧いただければありがたいです。


これで、「海外の鉄道・バスの旅」韓国編の記事・21回分がようやく完結しました。昨年秋の訪問記録にもかかわらず、1年近くもかかってしまい、些か間延びした感がありますがどうかご容赦願います。韓国の鉄道・バスは、DLが客車と電源車を1両ずつ牽いて走る江原道のローカル線、「マジンガー」とのニックネームを奉られている8000型EL(「Z」の形をしているから?)、それから市内バスのロデオ・ドライブ等々まだまだチェックしておきたいブツがたくさんあります。次は台湾か香港のシリーズを予定していますが、また韓国編の続編も機会があれば是非記事にしたいと考えています。


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