●第33回:「幌座」のいろいろ(1)~旧国鉄型電車

約4ヶ月ぶりとなった「貫通幌のガイドライン」、今回は「総集編」に少し戻って、「幌座」のいろいろな姿について見ていこうと思います。

「幌座」とは、貫通幌を取り付ける台座となる部分を指し、車両妻面の貫通扉に沿って枠状の溝のような形になっていますが、趣味誌やwebページ上の記述の中には、この部分を「幌枠」としているものも多く見受けられます。形状から考えて、ここを「幌枠」と呼ぶのは決して間違いではないのですが、私の認識では「幌枠」とは幌布の先端に装着された枠状のパーツを指しますので、やはりここは「幌座」としておきたいと思います。


…と何かまた最初からごちゃごちゃ言ってますが、ともかくこの写真から見ていきましょう。


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JR西日本・福知山運転所 クモハ112形の揃い踏み 2007年8月 福知山駅


上の写真は、福知山駅でスナップした113系Mc(クモハ113)+M'c(クモハ112)編成の揃い踏みの図、手前から豊岡方面行きの3800番台、真ん中が東舞鶴行きの舞鶴線5300番台、一番奥が園部方面行きのS4編成前パン仕様となっています。

いずれも偶数側(福知山駅基準で豊岡方面)向きのクモハ112で、一番手前のN編成・クモハ112形3800番台には幌がありませんが、このN編成3800番台の反対側の奇数(京都方面)向きのクモハ113形3800番台はご存知「なんちゃって旧形国電」非貫通タイプの「チャレンジャー」な仕様。

元は「Tc111+M113+M'c112」の各800番台で構成されていたY編成。当時はクモハ112に幌が付いていましたが、2000(H12)年ダイヤ改正に伴い奇数側のクハ111を外して2連化され中間電動車のモハ113が先頭車化改造を受けた際に、非貫通タイプの「旧国顔」となったため、ペアを組むクモハ112の前面から貫通幌が撤去されたという経緯をたどっています。

…と、今のは余談ですが、今回の記事的に上のスナップは、113系先頭車の幌座に幌が付いた状態と付いていない状態を一枚の写真で確認できる格好のサンプルとなっています。妻面から少し出っ張ったガイドレール状のものが貫通路に沿って一周している……この形状が165系をはじめとした旧国鉄「東海型」顔の電車の幌座のスタンダードといえるでしょうか。また、幌座の上辺と両側の角に至る小さな庇もまた特徴的なアクセントを加えています。

それでは、次はこの写真を見てみましょう。


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JR東日本佐貫駅 クハ401-87等15連常磐線・上野行き中電 2003年8月


今度は、常磐線中距離電車略して「中電」の顔として長らく活躍を続けてきた415系交直流型電車の先頭車、クハ401の幌付き顔ですが……JR東日本では西日本とは異なり、車両の奇数向きに幌が付いていますのでこの車両が水戸向きの最後尾車、ということになります。こちらはいかがでしょうか……妻面裾部のアンチクライマーと、奇数向き車ならではのジャンパ栓がイカツクてイイ、いやそういうことではなくて(笑)。

先程の1枚目の写真と較べて、幌というか幌座の部分の違いがわかるでしょうか。クモハ112で目立っていた幌座の出っ張りがほとんど見られません。でも、たまたま幌布が撓むか伸びるかして幌座の側面も覆い隠してしまった、とも考えられます。それならこの写真はどうでしょうか。


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台風の影響による強風で、中電332Mは佐貫駅で長時間の足止め


あ、間違えた。

これは2枚目の写真を撮ったときの状況説明でした。佐貫の一つ上野よりの藤代駅との間に長い鉄橋があるのですが、この時は台風接近に伴う強風で、風速計の計測値が30m/sを超えた、ということで上野行きの中電は佐貫で1時間以上足止めを食らったのです。

私は前日家族と幕張に泊まっていたのですが、この日は一人別行動で朝5時に起きて関東鉄道龍ヶ崎線に乗りに来ていました。行きは何とか遅延なしに来られたのですが、いざTDSに向かっているであろう家族と合流しようと元来た経路で千葉県へ向かって引き返そうとした途端、これです。

ヨメさんに持たせた携帯に駅の公衆電話から「電車止まってしもたぁ」ととりあえず連絡を入れて(この当時我が家には携帯は1台だけでした)「あほか」とひとしきり呆れられてから周りを見回すと、通学途中の高校生や出勤途中のおじさん方があちこちで携帯に向かって話していました。でも何となくみんな心持ち楽しそう。

あ、そこのキミたち、ちゃんとスカートの裾は押さえとくように。オレ関鉄と中電の写真撮りに来ただけで何も狙ろてへんから。こら、誰やそこできゃあとか言ってんのは……おっちゃんそんな「フェイント」には釣られへんよ。
(え、はい、今日の1時間目体育かも、ということはよく分かりました。貴重な情報提供ありがとうございました)

って何の話してましたか。


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北千住駅 クハ411-520等15連常磐線中電 2006年2月


今度の写真は常磐線中電の水戸寄り先頭車をアングルを変えて見てみたものです。この角度から見ると、幌布が幌座をブロックしているのではなく、やはり幌座の出っ張りがほとんどないことが見て取れるでしょうか。となると、国鉄型の電車で、直流車の幌座は出っ張りがあって、交直流車は出っ張りがない、ということになるのかもしれません。それはそうと、こちらのクハ411-520には妻面裾部にアンチクライマーがありませんね………いやまた枝葉に行くところでした。

それでは次はこちらの写真を。


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JR西日本近江今津駅 クハ412-8等3連 2005年12月


この413系交直流型電車は、奇数側(金沢寄り)から「Mc413+M'412+Tc412」という3連で1ユニットとなり、もともとは交直流型急行電車の455/457系のコンポーネンツを使って車端部のデッキを取り払ったセミクロスシートの近郊型仕様に作り変えたものです。先頭車の幌は、JR西日本の既定どおり偶数向き(米原寄り)車のクハ412が受け持っています。

こちらの幌座も415系と同様に出っ張りのない薄型になっていますが……では続けてこちらの写真を。

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敦賀駅 クハ455-20等3連 2006年12月


次は同じく交直流の急行型としてデビューした475系電車の偶数向き先頭車、前幌を受け持つクハ455のスナップです。この475系も金沢寄りから「Mc+M'+Tc」の3両で1ユニットとなっていますが……こちらも「交直流車」なので幌座は薄いと思いきや、意外にも幌座は直流車と同様の出っ張りのあるタイプ。

となると、他の形式についてもリサーチをしてみたくなります。とはいえ、北海道スペシャルの711系交流型電車や仙台近辺限定の717系交流型電車はまだ記録に収めていません(とか言ってるうちに717系は引退)。そこで、wikipediaの記事に貼られている画像で幌座の形状をチェックしてみました。

その結果、国鉄型貫通タイプの電車の幌座の形状は、以下のとおりに分類されることが分かりました。

 ※直流型電車(急行/近郊型) …… 出っ張りあり
 ※交直流型電車(急行型) ………… 出っ張りあり
 ※交直流電型車(近郊型) ………… 出っ張りなし
 ※交流型電車(717系) ……………  出っ張りなし
 ※交流型電車(711系) ……………  出っ張りあり

傾向としては、直流型と急行用(711系も「かむい」等急行向けの運用にも使えるよう設計された)車両の幌座は出っ張りがあり交直流・交流型の近郊型は幌座に出っ張りがない、ということになると考えられます。

「幌座」のいろいろ、もう少し続けて見ていきたいと思います。




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