◆Vol40:餘部探訪シリーズ(1)「カニづくし」の香住駅

先日約10年ぶりに餘部駅余部鉄橋に行ってきました。

但馬西部、つまりお隣の鳥取県と境を接する兵庫県美方郡に住む人々、あるいはその出身者、そして私のように出身者を親に持つ人々にとって、余部鉄橋とはある種の「区切りの場所」「美方への入り口と出口を象徴する場所」のように思われます(2005年の合併で香住町が隣接する美方郡村岡町・美方町とともに「美方郡香美町」となるまでは、鉄橋のある余部は美方郡の街ではなく城崎郡に属していましたが…)。

山陰本線といえば、日本海の海岸線に沿って走る路線、という印象がありますが、兵庫県内で日本海が見えるのは、京阪神いずれの場所からも3時間以上かかる汽車旅にそろそろ疲れ、車窓も見飽きてきたコースの終盤になった頃です。そして時には鎧駅で対向列車待ちをしてからいくつか大小のトンネルを抜けると……おもむろに眼下に余部の集落と国道178号線がミニチュアのセットのように広がり、国道を走るクルマが豆粒のように動いているのが見えます。ここが地上41.45m、長さ310.59mの偉容を誇る山陰本線余部橋梁。

橋に隣接している餘部駅(姫新線の「余部(よべ)駅」との混同を避けるために「餘」の字体にしているそうです)を過ぎれば美方郡の主要な鉄道駅である浜坂まではあと一息、靴を脱いでくつろいでいた人もいつの間にかウトウトしていた人も我に帰ってそろそろ下車の準備を始めます。浜坂駅からバスで20分ほど内陸に入った「湯村温泉」を全国的に有名にしたドラマ「夢千代日記」のオープニングはTV版も映画版もカメラワークこそ違え、どちらも余部鉄橋を渡るキハ58系の急行「但馬」(なぜか「はまかぜ」でも「出雲」でもないところが逆に面白い)でした。

しかしながら、都市部でも「一家にクルマ1台」となった今となっては美方出身の人々の帰省メインルートは山陰線から国道9号線となり、余部鉄橋に代わる「区切りの場所」は「関宮(せきのみや)の大ループ橋」となった感もあります。

……とまたまた例によって長い前振りとなってしまいましたが、ともかく小学生の子ども2人を「雪遊びさせたるから」と誘い出し、朝9時に神戸の自宅を愛車パジェロで出発しました(やっぱりクルマになってしまった)。途中第二神明加古川バイパス、そして播但道を北上して行くにつれて、降り始めた雨は次第にみぞれ混じりになり、雪になっていきます。どんどん数値が下がっていくクルマ備え付けの温度計と、前方の山々が雪を被っているのを見た子どもたちは大喜び、でもかつて雪道で2、3回パジェロに安藤ミキティさせてしまったことのある(よく事故にならなかったものだ)私としては少々不安になり、鉄橋下まで一気に行ってしまうか、それとも豊岡あたりでクルマを駐車場に放りこんで普通列車で往復するか、餘部と周辺駅の時刻表をメモしてきたノートを交差点で停まるたびに睨みながら思案することになりました。

結局は道路上には意外と雪は残っておらず、でもせっかく鉄道の写真を撮りに来たのだからということで、香住駅に隣接している町営駐車場にクルマを置き、そこから2駅先の餘部まで往復することに決めました。時間はちょうど12時、浜坂行きの171Dが12:31着ですからタイミング的には妥当なところです。


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クルマの中で途中買ったコンビニのお弁当を食べ、改札で餘部までの切符を往復で買ってから一息ついて周りをよく見回してみると、この香住駅は至る所もうカニだらけ。

駅には大阪を朝8時前に出てきた「かにカニはまかぜ」が停まっているかと思うと、駅前のモニュメントにもカニ、それからカニ爪のハリボテに郵便ポストの上にまでカニのオブジェと徹底しています。よくよく考えてみれば、但馬に数ある漁港の中でも、香住は豊岡の津居山と並んで松葉カニ漁の拠点ともいうべき場所で、同時に京阪神からの「カニツアー」の一大スポットです。私自身は最近はご無沙汰していますが、毎年のように参加していた山陽電鉄日帰りバスツアー(大人一人6,900円)でのメイン・イベントカニ食べ放題1時間1本勝負」の「会場」はいつも香住駅から歩いて5分ほどの海岸通り沿いに立ち並ぶお店でした(何で鉄ヲタのくせにはまかぜで行かないのか、というツッコミは甘んじてお受けします)。

気が付くと「かにカニはまかぜキハ181はいつの間にか休憩場所(?)の豊岡に向けて出発しており、もうそろそろ城崎温泉からのディーゼルカー171Dがやって来る時間です。香住12:31着で3分間停車、ホーム間を移動する地下道は浜坂寄りにあって深さもそれほどではないことから、乗車前に対向ホームから編成撮りをする時間は充分ありそう。餘部見学とおぼしき人々も数人の男女グループ、家族連れ、カップルと、次第に駅へ集まり始めました。

(つづく)


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【追記08.04.04】
◆「"餘部鉄橋"でひとこと」(はてなハイク)
~「餘部シリーズ」の「延長戦」はここに写真を貼ったり小論を書いたりして続けていきたいと思っています。もうすでにいくつかのネタを投下していますが、当ブログでは敢えて今回書かなかった話(何で橋の架け替えが必要なのか、これから香住-浜坂間はどうなっていくのか等)を書いたり、本編記事ではアップしきれなかった写真などを貼っていくつもりです。