◆Vol44:餘部探訪シリーズ(5)橋の下の喫茶店
餘部探訪シリーズ・第5回、過去4回の以下の記事の続きです。
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海から吹く冷たい風と、子供たちの罵倒に追われるようにして入った余部鉄橋直下の喫茶店、そのお店の扉を開けたその瞬間から、そこには周りとは別の時間がゆっくりと流れているようでした。子供たちはケーキと上の息子はホットミルクを、下の娘はココアを注文し、そして私はコーヒーを注文し、ポケットからマールボロ・ライトを1本取り出して火を付けて、ふと外を見ると、ランプシェード越しに鉄橋のシルエットが水滴の中に浮かんでいました。
ハンドメイドと思われるケーキ(マロンとチョコレート)を2人から少しずつもらって食べてみると、それがまたなかなかおいしい。下の娘は、お店に入る直前になにやらチェックしていたようで、しばらくすると、私のデジカメを持って「ちょっと写真撮ってきてもいい?」と上の息子を誘ってお店の玄関や外回りで何やらスナップしていました。
とにかく暖かいところに入りたかった私は全然気が付かなかったのですが、入り口玄関の所に大きな犬の置物があったようです。戻ってきた後、2人は「家でもペット飼いたい」「でもマンションだからダメやね」「でも小鳥だったらいいんでしょ?」とひとしきり家で飼う生き物の話を始めました。で、何度も私に「犬かネコ飼える家買ってよ」「おばーちゃんは生き物キライなの?」とかしきりに聞いてきます。仮に何かペットを飼ったとしても、絶対世話は私か、結局ヨメの負担になるのは分かり切っているので、私は熱心に聞いている振りをしながら聞き流すのに難儀しました。何せ金魚を保育園とかでもらってきても3日と保たずに世話を放り出すのですから(笑)。
私たちが入ったときは先客が2、3人ほどだった店の中も、後から後から餘部駅見学組の人々がやって来て、いつの間にか空席がほとんどない状態になりました。おそらく理由は私たちと同じでしょう。海と山からの冷たい風に追われて、次の列車が来るまでの間のシェルターを求めて来た人々で満員となった「橋の下の喫茶店」、私の頭の中にはふとある曲が思い浮かびました。
故・大塚博堂氏(1944-1981)の「坂の上の二階」。
坂の上の二階… そんな名前の店
坂を登り詰めて ぼくはいつものように
風に追われて 階段を上がる………
坂を登り詰めて ぼくはいつものように
風に追われて 階段を上がる………
【歌詞全文】→「山散歩 -例えば風に向かって2」(jinsei-rararaさん)
【試聴ページ】→Yahoo!ミュージック -大塚博堂「ダスティン・ホフマンになれなかったよ」(要iTunes無料版のダウンロード)
【試聴ページ】→Yahoo!ミュージック -大塚博堂「ダスティン・ホフマンになれなかったよ」(要iTunes無料版のダウンロード)
この歌の設定は、余部の「橋の下の喫茶店」とは全くの正反対なのですが、冬の寒い餘部駅から急な坂を降りた先にあった「あたたかでゆったりとした空間」に”愛を唄う吟遊詩人”博堂氏の優しいメロディーラインが良く合うように感じられたのです。さっきまであれほど文句たらたらだった(当たり前か)はずの子供たちもいつの間にかすっかり機嫌を直したようで、「今日来て良かったね」「またここに来ようね」などと言い合っていました。でも最後にいつも一言多い上の息子のトドメの一発。
「お父さん、でももう冬は止めてなぁ」
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1986年12月に起きた余部鉄橋列車転落事故の慰霊碑、どこにあるのかと思いながら駅からの坂を降りていたのですが、この「橋の下の喫茶店」のすぐ隣に静かに佇んでいました。最後は今回の餘部探訪で唯一撮った山側の写真、海側では雨で雪が解けてしまっても、やはり山側は雪を被って真っ白になっていました。
他にもお見せしたいスナップがいくつかあるのですが……枚数も結構ありますので以下は「はてなフォトライフ」にアップすることにします。画像へのリンクは次のとおりです。