●第42回:JR西日本521系電車の貫通幌

「貫通幌の観測と研究」……今回も引き続き7月下旬の「北陸&大糸線青春18』フィールドワーク」で観測した「幌」レポートについてです。


今回のテーマは、2006(平成18)年秋の敦賀直流電化延伸に伴って新製投入された521系近郊型交直流電車ですが、スペック等の詳細はJR西日本521系電車 -Wikipediaをご覧いただくとして、概要については以下のとおりです。


※車両設計の基本は223系5000番台(前頭部&座席配置)と321系(構体設計)
※1編成の制作費は約4億円、直流延伸を要望する滋賀県福井県が負担
※2009年春時点で5編成10両が落成、運用中
※運用区間は以下のとおり
 北陸本線福井以南(米原-長浜-敦賀-福井)
 湖西線近江今津近江塩津
 小浜線舞鶴敦賀(09.3のダイヤ改正から)
※全車「金フイ」(福井地域鉄道部敦賀運転派出)所属
※編成については次のとおり
 米原 クハ520(Tpc)+クモハ521(Mc) →直江津
※トイレは洋式をTc車に装備
※ワンマン対応機器搭載(料金表、運賃箱、ワンマン表示など)
※客用ドア開閉スイッチを車内外に装備
※Mc車は直流用機器のみ搭載、Tc車に集電・整流等交直流対応装備を搭載
※モーターはIGBT素子使用のVVVFインバータ
※直流電車の223系との併結は不可。

「本題」の貫通幌についての特徴は……次項をご覧ください。

2 貫通幌(クハ520)の構造



例によって前幌付きの前面をクローズアップしてみましたが、いかがでしょうか。

瀬戸大橋線の快速「マリンライナー」に投入されている同じ貫通幌装着タイプの223系5000番台(Tc222-5000)のライン色を変えたようなイメージですが…幌装着の向きもJR西日本の既定のパターンとなっている偶数向き(東海道本線基準の神戸向き/北陸本線では敦賀米原向き)となっていて、前幌は制御車のクハ520が受け持っています。

ちなみに、前項の「概要」でも触れたとおり、クハ520には整流用等の各種コンポーネンツがぎっしり詰まっている上に、後位側にパンタグラフまで装着しているので、デビュー時に各趣味誌で目にした際にはこちらがMc車か…でもって前幌の受け持ちのパターンも既定の偶数向きから奇数向きに代わったのかと勘違いしてしまいました。

それはともかくとして、異彩を放つのは……二重の幌座と従来型とは異なり「はめ込み金具」と「受け金具」(私個人が便宜的にこう呼んでいるだけですが)の間隔の広い幌吊で、これは前回記事で取りあげた125系3次車の幌と同じタイプのものです。

この形状の幌は、JR西日本で最近デビューした近郊型車両…223系5500番台(福知山区)やキハ122/127系(姫新線用)にも装着されており、今後のJR西日本の車両の貫通幌の標準になっていくと思われます。それでは、次は幌を装着していない側の形態も見ていきましょう。


3 幌座(クモハ521)の構造



幌の付いていないクモハ521側の部分ですが…前幌付き側と同様に、編成全体と前頭部のクローズアップの2枚写真を挙げてみました。125系3次車とは異なり、こちらの幌座には上辺部分に角張った庇のようなものは付いていません。しかし幌座の上辺のすぐ上には棒状のものか単なるラインかはわかりにくいのですが、長方形の幌ユニットを取り付ける際にぴったりとフィットしそうな直線が一本通っています。


今後521系の増備や運用範囲の拡大があるかどうかは不明(沿線自治体の費用負担がおそらくは必要となる)ですが、北陸新幹線の延伸具合と在来線の運営方法(三セク化?)ともリンクして、521系のこれからの動きには注目していきたいと思います。