●第31回:韓国の鉄道車両の連結幌(2)

今回の「貫通幌のガイドライン」は、韓国の鉄道車両の貫通幌の2回目です。

前回は、ムグンファ号セマウル号用客車の連結幌を見ていきましたが……今回は韓国鉄道博物館に静態保存されているトンイル号/ピトゥルギ号用客車の連結幌をじっくりと見ていきたいと思います。


トンイル号/ピトゥルギ号用客車については、上の記事でもスナップをご紹介しましたが、この時のコメント返しでも書いたとおり、幌をメインにした写真も何枚か撮って来ていました。まずは、この写真からご覧いただきましょう。


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トンイル号用客車13101号車 2006年10月 韓国鉄道博物館


緑とクリームのツートンカラーがトンイル号用客車の特徴ですが……車両の両端にしつらえられている2枚幌もまた特徴的です。

バッファ(緩衝装置)も兼ねている大型の幌枠(「センターバッファー」とも言われる)、ヒダが少なく分厚い幌布(車体色とコーディネートして緑色に塗られている)、そしてダンパー式の幌吊は日本で見られるモノとは異なって幌枠の下部へと長く伸びています。更に、幌の上端左右に板バネ押し出しタイプの保持装置まで装備されており、その重装備ぶりは「萌え」を通り越してひたすら圧倒されるばかりというほかはありません。

次は、ピトゥルギ号用客車の幌を見てみましょう。


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ピトゥルギ号客車12061号車 2006年10月 韓国鉄道博物館


ピトゥルギ号用客車の幌もトンイル号のものと基本的な構造は同じですが、こちらにはダンパー式の幌吊が省略されています。せっかくなので(?)、分厚い幌布にちょっと少し触れてみましたが、入念に防水加工が施された幌布はガチガチに固められており、「布」というよりはほとんど板に近いような感触でした。

幌布と関連パーツのこのような構造は……「オールド・アメリカンスタイル」とでも言えばいいでしょうか、かつてのアメリカのインターバン(郊外電車)等で見られた特徴的なスタイルです。また、イリノイ・セントラル鉄道の車両の流れを汲むと言われている阪急の名車・P-6の貫通幌も同様の構造で、日本でよく見られるジャバラタイプのものとはまた違った個性を持つ「逸品」だと思います。

このアメリカン・スタイルの幌の「持ち味」は、大型のセンターバッファと押し出しタイプの板バネで、車両を連結すればそのまま物理的に連結するアタッチメント類なしで幌布や幌枠(センターバッファ)を固定可能な点ですが、やはり板バネ等の保守に手間がかかるのが難点なのかもしれません。

【参考リンク】
■South Bend South Shore Images
アメリカ・シカゴのSouth Shore Train(NICTD)旧型電車の画像集。

【参考記事】
●第1回:ホロフェティシスト宣言!
~阪急P-6などアメリカン・スタイルのアグレッシブかつ豪快な幌の画像を収録

【参考文献】
鉄道ジャーナル'73.2号(No.70)「私鉄名車物語①新京阪デイ100」


ところで、現在はこういうアメリカン・スタイルの豪快な幌は見られないのか……といえばさにあらず、今度はこの写真を見てみましょう。


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台湾鐵路局 EMU500形通勤電聯車

EMC566(rail2000氏:Flickr)より
クリエイティブ・コモンズ「表示-非商用-改変禁止2.0」ライセンスで公開されています。

この写真は、「貫通幌のガイドライン」シリーズではすっかりおなじみになった台湾鐵路局のEMU500型通勤電聯車ですが……韓国生まれ(大宇重工製)のこの車両の幌は、大型の幌枠、ヒダの少ない分厚い幌布、下へ長く伸びる幌吊、そしてバネ押し出し式の保持装置、とまさにオールド・アメリカンスタイルそのもの。幌マニアとしては、近頃増備された日本デザインのEMU700型が非貫通タイプで登場したのが返す返すも残念です(そこまで言うか)。

今回の記事は一体どこの国の車両がメインテーマだったのか、最後で訳が分からなくなってしまいましたが、韓国ホロシリーズ、あともう1回予定しています。次回は、広域電鉄線の車両に使われている連結幌を見ていきましょう。


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休憩室として使用されているトンイル号用客車(ムグンファ号塗色) 韓国鉄道博物館 2006年10月